即時償却(読み)そくじしょうきゃく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「即時償却」の意味・わかりやすい解説

即時償却
そくじしょうきゃく

設備投資にかかった費用を、初年度全額損金経費)として計上し、利益から差し引くことができる仕組み。設備投資費は通常、設備ごとの耐用年数に応じ、毎年一定額あるいは一定割合ずつ損金として利益から差し引く(減価償却する)。しかし即時償却して1年で全額を損金計上すれば、その分だけ利益が大きく減り、課税対象所得が小さくなるため、その年度の法人税負担が軽くなる。これにより手元に残る資金が多くなり、さらなる設備投資の呼び水になることや、金融機関への返済を増やすことができるなどの利点がある。ただし通常の減価償却と即時償却のいずれを選択しても、耐用年数が終わる時期までの最終的な納税額は同じである。

 即時償却は投資減税手法の一つである。バブル経済の崩壊で落ち込んだ設備投資を活発にするため、日本政府は1999年(平成11)からパソコンなど100万円未満の事業用情報通信機器の即時償却を認める「パソコン減税」を実施したほか、太陽光発電装置など省エネ設備への投資促進や、中小企業の優遇税制の一環として即時償却を導入している。第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権成長戦略の一環として、2013年(平成25)12月に成立した産業競争力強化法に、最先端設備投資の促進を盛り込んだ。具体的には、3年間で生産性が平均1%以上向上する設備や投資利益率が15%以上(中小企業は5%以上)の生産ラインに即時償却を認めるという内容である。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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