改訂新版 世界大百科事典 「厚壁組織」の意味・わかりやすい解説
厚壁組織 (こうへきそしき)
sclerenchyma
植物の組織の一つ。厚い二次壁をもつ細胞からなる機械的に植物体を支持する機能をもつ組織で,細胞壁が木化していることが多く,また,細胞の内容を失っていることが多い。従来は厚膜組織といわれたが,cell wallの訳語が細胞膜から細胞壁に変更されたのに伴い厚壁組織と呼ばれるようになった。厚い一次壁をもつ細胞からなる組織は厚角組織といい,厚壁組織と区別する。厚壁組織は植物体が若いときにはあまり目だたないが,しだいに分化してくる。厚壁組織の細胞には,枝分れをするなどさまざまな形をもつ厚壁異形細胞と,紡錘形の細長い繊維細胞とがある。厚壁異形細胞は層をなすものもあり,また葉の組織などに散在して支持の役割をするものもある。繊維細胞は木部繊維,師部繊維を構成して維管束の中にあることもあり,また維管束外にあって繊維を構成することもある。これには,アサ,アマの師部繊維から得られる繊維など,日常生活に関係の深いものが多い。ただし,ワタの繊維と呼ばれるものは,正しくはワタの種子の毛である。
執筆者:原 襄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報