皮層(読み)ヒソウ

デジタル大辞泉 「皮層」の意味・読み・例文・類語

ひ‐そう【皮層】

植物の茎や根の、表皮中心柱との間の層。主に柔細胞からなる。地上茎では葉緑体を含み光合成を営むことが多く、地下茎・根ではでんぷんなどを蓄える貯蔵組織になる。

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精選版 日本国語大辞典 「皮層」の意味・読み・例文・類語

ひ‐そう【皮層】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 皮のかさなり。
  3. 植物の基本組織系一つ。表皮と中心柱の間の部分。主に柔細胞からなり、茎では葉緑体を含み光合成を営むことが多い。また、澱粉などの一時的な貯蔵組織ともなる。〔五国対照兵語字書(1881)〕
  4. ( 形動 ) =ひそう(皮相)
    1. [初出の実例]「政海の潮流の皮層をのみ見る者は」(出典:黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「皮層」の意味・わかりやすい解説

皮層
ひそう

維管束植物の茎と根の表皮と維管束組織との間にある基本組織のうち、とくに一次組織についていう。従来は植物体の表面近くの組織をさして使われたが、現在では、植物の組織を三つの組織系、すなわち表皮・皮層・中心柱に分ける方法が定着しているため、皮層は植物の一組織系ということができる。この場合、表皮のすぐ下の組織から中心柱を取り囲んでいる内皮までが皮層となる。皮層の組織のほとんどは柔組織で、地上茎では葉緑体を含む緑色組織となっていることが多く、周辺部に厚角組織をもつことも多い。地下茎や根では白色体を含んで養分の貯蔵場所となることが多い。こうした茎や根においては細胞間隙(かんげき)が発達し、とくに湿地の植物や水生植物では通気組織となる。被子植物の若い茎では厚角組織が支持組織としてまず生じ、ついで厚壁組織や維管束組織がこの働きに加わる。裸子植物やシダ植物では厚壁組織がみられる。このほか、異形細胞として結晶貯蔵物質を含む細胞、厚壁異形細胞、乳管などをもつ場合もある。

 種子植物の茎のほとんどには内皮がないが、維管束組織を取り巻いて、デンプン鞘(しょう)とよばれる、とくに多量のデンプン粒を含む細胞層がみられる場合がある。このデンプン鞘は内皮と関連づけて考えられている。根における皮層は、最外層または外側の数層の細胞がコルク化したり木化して、表皮が壊れたあとの保護組織として働く場合があり、これを外皮とよぶ。イネ科やカヤツリグサ科では、厚壁化した外皮を生じる。頂端分裂組織から皮層への発生的な由来関係は、根ではかなりはっきりと追跡することができる。ほとんどのものでは皮層となる前の原皮層の範囲が認められ、なかには皮層の始原細胞群をもつ根端分裂組織もある。

[西野栄正]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「皮層」の意味・わかりやすい解説

皮層
ひそう
cortex

植物で茎や根の表皮と中心柱との間の部分をいう。皮層の最内部は内皮として中心柱に接する。葉では葉肉組織が皮層に相当する。草本類の茎の皮層では外層に厚角組織が発達し,機械的組織として役立つ場合もあり,葉緑体を有して同化組織の役割をすることもある。

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世界大百科事典(旧版)内の皮層の言及

【根】より

…茎には通常不定根をつくる能力があり,生長促進物質,とくにオーキシンには不定根を新生させる性質があることが知られている(図1)。
[根の形態]
 根の基本的な構造としては,(1)表皮,(2)根毛,(3)根冠,(4)皮層,(5)中心柱などがある(図2)。(1)表皮 表皮組織は原則的には茎のものと同じであるが,地中ではクチクラが発達しなかったり,気孔が形成されなかったりする。…

※「皮層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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