乳幼児と、その訴えや要求にこたえてくれる母親などの限られた養育者との間で形成されていく親密なきずな(愛着、アタッチメント)が、うまく形成されないことで起こる子供の反応や行動。「反応性愛着障害」、「アタッチメント障害」ともよばれ、RADと略称される。乳幼児は不安や不快などを感じたときなどには、周囲の養育者に対して泣いて訴えたり接触を求めて甘えたりしてきずなを求める愛着行動を起こす。しかし、養育者による心理的虐待や育児放棄、あるいは養育者の精神的障害などにより、子供の愛着行動を受け止めてきずなを形成していく養育環境がきわめて不適切であったり、日常環境での孤立などを経験したりすると、さまざまな不安定な行動を示すようになる。周囲からの働きかけに反応しない無感情や、警戒して人に近づかなかったり、自分を制御できずに攻撃的になるなど、対人関係に支障をきたすほか、社会的な不適応を示す。乳幼児期あるいは小児期早期に発症することが多いとされる。
アメリカ精神医学会のDSM-5では心的外傷(トラウマ)・ストレス因子関連障害に含められ、その亜型として抑制型(人との接触行動が過度に抑制されている)と脱抑制型(人を選んで適切に愛着を示す能力が欠如した無分別な社交性)に分類され、抑制型を反応性アタッチメント障害とよび、脱抑制型は「脱抑制型対人交流障害」とよばれる。反応性アタッチメント障害からは「自閉症スペクトラム症(障害)」は除外され、脱抑制型対人交流障害からは「注意欠如・多動症」は除外される。また世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)には、「小児期の反応性愛着障害」および「小児期の脱抑制性愛着障害」として記載されている。
[編集部 2016年5月19日]
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