乳幼児が、不安や不快などストレスを感じている状況で、自分の親など周囲の養育者に対して泣いて訴える、あるいは接触を求めて甘えるなどして、親密なきずなを形成しようとする愛着行動に関する理論。イギリスの児童精神分析学者ボウルビーJohn Bowlby(1907―1990)が提唱したもので、動物に生来備わっている自分の生命の安全を確保しようとする本能に基づく生得的行動により、自分の訴えや要求にこたえてくれる限られた養育者との間で愛着(アタッチメント)が形成されることがたいせつと考える。愛着は1歳ころまでに形成されるが、訴えや要求に対する応答が密なほど安定した愛着(安定型愛着)が形成され、小児期以降に安定した対人関係をつくりあげる礎(いしずえ)となる。しかし、安定した愛着が形成されない不安定型愛着では愛着形成障害を生じ、その後の心身の不安定や行動障害をもたらす。
ボウルビーは「愛着」の形成過程を次の四つの段階に分けている。まず生後3か月ころまでの第1段階では愛着はまだ形成されず、周囲の注意をひこうとだれに向かっても同じように泣いたりほほえんだりする。しだいに養育者とほかの人物を区別するようになる生後6か月ころまでの第2段階では、養育者に対してとくに強く反応し、笑ったり凝視したりする、あるいはあとを追うような行動もみられる。生後6か月~2歳ころまでの第3段階では愛着が確実に形成され、養育者を安全基地とし、そこからある一定の範囲で行動したり探索行動をおこして、ふたたび基地に戻る。また、成長するにつれて自分の要求を主張し、実現に向けて執拗(しつよう)な行動をとるようにもなる。3歳以上の第4段階ともなると、養育者との身体的接触を求めることは少なくなり、養育者の意図や感情を理解し、協力して行動するようにもなる。
[編集部]
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