対人関係(読み)たいじんかんけい(英語表記)interpersonal relations

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

対人関係
たいじんかんけい
interpersonal relations

集団生活が続けられるうちに,メンバー相互の間に形成されるある特徴的な心理的関係相互作用パターンをさす。これにはたとえば協力,競争,支配,服従などがあるが,これらはメンバーの適応動機づけなどに影響を及ぼすとともに集団全体の特性にも影響する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

対人関係
たいじんかんけい

人間は、文字どおり人と人との間のかかわり合いの網目のなかで生活しているのであるが、そのかかわり合いの基本的単位は、二者間のコミュニケーションに代表される相互交渉ないし相互作用であり、それがある期間持続し安定した形をとるとき対人関係とよばれる。対人関係の心理学に基礎的な考察を展開したオーストリア生まれの社会心理学者ハイダーFritz Heider(1896―1988)は、対人関係という用語には、1人の人がもう1人の人についてどのように考えまた感じるか、また相手および相手が自分に対してすることをどのように知覚するか、相手が自分に対して何をし何を考えると期待するか、相手の行為に対してどのように反応するかなどの事柄が含まれるとし、日常生活での意識的レベルのできごとを考察の出発点としている。これに対して、精神分析やそれに近い精神医学者のなかには、幼少期の親子関係、とくに母子関係や友人関係に根ざした、無意識のレベルの対人関係の影響を重視する人々がいる。
 対人関係の心理学では、自他についての認識の仕方、相手に魅力を感じる条件などが詳しく研究されているが、前者からは認知的バランスの理論や帰属過程の理論などが生まれ、後者では物理的近接の要因や自分にとってなんらかのプラスになるという強化の要因などがあげられている。また、対人関係の基本的な側面としては、協同か競争か、友好か対立か、上下か対等かといった三方向が考えられている。[辻 正三]

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精選版 日本国語大辞典の解説

たいじん‐かんけい ‥クヮンケイ【対人関係】

〘名〙 他の人との人間関係。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生とその兄弟「それは対人関係の商売化だと云った」

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最新 心理学事典の解説

たいじんかんけい
対人関係
interpersonal relationship

人間は一人だけで生きていくことはできない。日常生活の中でわれわれは,他者と語らったり,助け合ったり,共通の目標を達成するためにともに努力したりする。こうした相互作用を通じて,特定の人と心理的な結び付きが生じることがある。結び付きが一時的なものではなく,ある程度持続している場合,それを対人関係とよぶ。具体的には,家族関係,友人関係,恋愛関係,夫婦関係,学校や職場など集団の関係などが挙げられる。バウマイスターBaumeister,R.F.とリアリーLeary,M.R.(1995)は,持続的で安定した枠組みの中でこのようなポジティブな相互作用を頻繁に行なうことを求める欲求は,人間のさまざまな欲求の中でも最も基本的なものであると主張した。人間はこの所属欲求need to belongに基づいて関係を形成したり集団に受容されることによって,厳しい環境の中で生存や繁殖が可能となっただけでなく,食料などの資源を分配・共有することで個人の負担を少なくすることができたのである。

 対人関係にはさまざまなタイプがある。フィスクFiske,A.P.(1992)の関係モデル理論においては,人びとが4種類の異なる関係スキーマを用いて,他者との関係を形成したり,評価・調整などを行なうことが仮定されている。第1は共同体的共有communal sharing(CS)であり,社会的に重要な側面において両者が同等であり分化していないという知覚に基づく。家族関係や親友関係が典型的なものであり,これらの関係の中では,お互いを同じ存在として扱い,相違点よりも共通点に焦点を当てる。第2は権威地位authority ranking(AR)に基づく関係であり,軍隊や官僚組織,多くの企業のように,階層的な社会的関係に沿って人びとが順序づけられる。この関係の中では,相手との相対的地位が重要な社会的事実となり,各人が行なうべき仕事や利益の分配は上位者が決定する。第3は平等調和equality matching(EM)であり,多くの友人関係やルームメイトに見られる。この関係においては,両者が同等の貢献や対応を求められる。資源は平等に分配され,利益の授受に関しては互恵性の原理が適用される。第4は市場価格market pricing(MP)に基づく関係であり,平等よりも衡平性によって相互作用が組織化される。すなわち,人は当該の関係に対する貢献度に対応する分だけ,その関係から得ることができる。

 クラークClark,M.S.とミルズMills,J.(1979,1993)は,対人関係を共有関係communal relationshipと交換関係exchange relationshipに分類した。前者は,典型的には家族や友人関係に見られるように,互いに相手の欲求に責任をもち,その福祉に配慮することが求められる関係である。後者は,短期的なビジネス相手や初対面の他者との関係に典型的に見られるように,相手の欲求よりも,双方の貢献度のバランスが重視される。共有関係と交換関係は,前述のフィスクのモデルにおける共同体的共有関係と市場価格関係に相当すると考えられる。

 良好な対人関係は,個人の精神的・身体的健康の維持に貢献する。テイラーTaylor,S.E.(2010)はストレス事象に効果的に対処するために必要とされる心理社会的資源として,個人の心理的特性である自尊感情,楽観主義,コントロール感に加えて,他者との関係の中で得られるソーシャル・サポートsocial supportを挙げた。これまでの研究では,とくに,知覚されたサポートが精神的・身体的健康と密接に関連することが知られている。また,良好な対人関係の中では,「互いに相手の自己開示を促す」「関係を高揚させるような原因帰属を行なう」「受容と尊敬を示す」「相手の貢献を理解する」など関係維持のための気遣い行動mindingが行なわれるが,これらは心理社会的資源としての自尊感情を高めることにつながる。さらに,良好な関係の中では,パートナーが互いの理想的とする自己を知覚的,行動的に肯定することによって,共に理想自己に近づき双方の幸福感が増す可能性が指摘されており,ミケランジェロ現象とよばれている(Kumashiro,M.,Rusbult,C.E.,Wolf,S.T.,& Estrada,M.,2006)。自己確証理論self-verification theoryによれば,人は自己概念を確証しようとする欲求をもつ。その方略の一つは,確証してくれる適格な他者と良好な関係を維持することであり,それが自己確証への欲求を満たしてくれることにもなる。

 対人関係には,こうした肯定的側面と同時に否定的側面も存在する。具体的には,葛藤,威嚇や暴力,嫉妬や妬み,拒絶や無視,からかい,不平などが挙げられる。これらは個別に研究されてきたが,嫌悪的対人行動aversive interpersonal behaviorと総称され,総合的に理解しようとする試みがなされるようになった(Kowalski,R.M.,2001)。この種の対人行動,とくに他者や集団から拒絶や排斥を受けることは,他者との関係維持が生存に重要な意味をもつことを考えれば強い否定的影響を及ぼす。ウィリアムズWilliams,K.D.(2009)のモデルでは,人が他者から拒絶や排斥を受けると,悲しみや怒りを感じると同時に,所属欲求,自尊感情,コントロール,有意味な存在という四つの欲求が阻害される。そのため,拒絶や排斥を受けた人は所属欲求や自尊感情を回復させるため,受容の手がかりに注目したり,受容されるための行動を取る。コントロール欲求や有意味な存在でありたいという欲求を満たすためには,相手への報復や非難,他者をコントロールするための行動を取る。これらの試みが達成されない場合,最終的に資源を使い果たし,疎外感,抑うつ,無力感,無価値感を感じることになる。

 対人関係は,人間の条件の基盤であると同時に主題でもある(Bercheid,E.,1999)。個人の心理過程を理解するためにも,対人関係の形成や維持,解消や崩壊にかかわるメカニズムの理解は欠かせない視点を提供している。 →葛藤 →自尊感情 →ソーシャル・サポート
〔安藤 清志〕

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