改訂新版 世界大百科事典 「受験雑誌」の意味・わかりやすい解説
受験雑誌 (じゅけんざっし)
基本的には,上級学校の入学試験に合格するためのハウツーhow-to(実用)誌。1873年日本で学校制度が敷かれて,それまでの身分制社会下の教育手法から近代的教育システムへの変革がめざされたが,その意義を普及させるためにも,学校教育を整えるためにも,かなりの時間を要した。前者の普及につれ後者の不備を補完するために現れたのが受験参考書であり,続いて受験雑誌が現れた。最初の受験雑誌は藤森良蔵と塚本哲三による《考へ方》(1917)である。創刊号は3万部,青野文魁堂と山海堂が出資して,無料で配布された。2号からは独立採算で藤森が受け持った。その後《受験と学生》(1918,研究社),《受験》(1925,大明堂)などが創刊され,受験雑誌の原型は大正期にできあがる。昭和初期には,受験雑誌の代名詞になる《受験旬報》(1932,旺文社。41年《蛍雪時代》,95年《KEISETSU大学入試情報》と改題)が創刊され,一つの頂点に達した。第2次世界大戦後,受験競争が激しくなるとともに,受験雑誌は多種多様にわたり量も増大する。さらに入学試験のみならず,学校で実施されるさまざまな試験に対応して,予・復習ノート類,チャート式など,いわゆる学習参考書といわれるものが現れ,受験参考書との境界はあいまいになってきた。また近年は模擬テスト,添削指導などと呼ばれるコンピューターを利用したダイレクト・メール方式の通信教育テストペーパーが急成長を遂げ,教育社,福武書店(現,ベネッセコーポレーション)などが新勢力となって,従来の受験雑誌,学習参考書の市場が様変りしている。この傾向はCAI(Computer Assisted Instruction)など新技術との結びつきにより,ますます多様なものとなるであろう。
執筆者:清田 義昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報