日本大百科全書(ニッポニカ) 「呂振羽」の意味・わかりやすい解説
呂振羽
りょしんう / ルーチェンユ
(1900―1980)
唯物史観を奉ずる中国人古代史家。日本に留学し、北京(ペキン)の民国大学、中国大学の教授となる。1934年『史前期中国社会研究』、続いて『殷周(いんしゅう)時代の中国社会』を著して指導的地位を確立した。当時、郭沫若(かくまつじゃく)が、殷代は原始共産社会の末期にあたり、周代より奴隷制時代に入ると主張したのに反対し、殷代はすでに奴隷制社会であり、西周は封建時代が始まったと唱え、翦伯賛(せんばくさん)など多数の学者の支持を受け、やがて郭沫若も自説を改変せざるをえなくなった。呂振羽によれば、西周時代にはなお奴隷制が残って封建と両立していたが、宣王(せんおう)(在位前827~前782)の中興により封建制が確立したという。ただしその後、学界は封建時代の開始をいっそう後世へ繰り下げる傾向にある。彼は日本の唯物史観派の所説にも批判を加えた。
[宮崎市定]