日本大百科全書(ニッポニカ) 「唾液腺腫瘍」の意味・わかりやすい解説
唾液腺腫瘍
だえきせんしゅよう
唾液腺には種々の腫瘍が発生する。それらのうちでは上皮性腫瘍が多いが、非上皮性の腫瘍もある。もっとも多いのは良性の混合腫瘍(多形性腺腫)で唾液腺腫瘍の約80%を占める。
[河村正三]
混合腫瘍
耳下腺にもっとも多く(混合腫瘍の約85%)、顎下(がくか)腺がこれに次ぐが、その頻度はそれほど高くない(約5%)。30~60歳に好発し、女性が男性よりやや多い。発育はきわめて緩慢で20~30年に及ぶものもある。しかも相当大きくなっても症状は腫瘍を触知する以外にほとんどないのが、むしろ特徴でもあるが、なかには(約20%)悪性変化するものもある。治療は摘出以外にない。
[河村正三]
ガマ腫ranula
口腔(こうくう)で舌下部にみられる舌下唾液腺の貯留嚢胞(のうほう)で良性である。粘膜のすぐ下にあり、内部が透き通るようにやや青みがかってみえる。発育は緩慢で、症状もまったくないが、あまりにも大きくなると舌を自由に動かしにくくなり、言語障害がおこる。内容の液体は透明で、粘稠(ねんちゅう)度のやや高い唾液である。完全に摘出しないと再発しやすい。
その他の良性腫瘍は少ないが、腺腫、脂肪腫、神経鞘(しょう)腫、リンパ管腫、血管腫などがある。
[河村正三]
悪性腫瘍
被膜を破って周囲に浸潤するので可動性がなく、疼痛(とうつう)を伴う。扁平(へんぺい)上皮癌(がん)は耳下腺に多く、顎下腺がこれに次ぐ。60歳代の男性に多く、唾液腺腫瘍のうちでもっとも悪性度が高い。腺癌は小唾液腺に多い。
[河村正三]