脂肪腫(読み)シボウシュ(その他表記)Lipoma

デジタル大辞泉 「脂肪腫」の意味・読み・例文・類語

しぼう‐しゅ〔シバウ‐〕【脂肪腫】

脂肪細胞増殖してできる良性腫瘍しゅよう皮下筋肉の間などに発生し、こぶのようになる。リポーマ(lipoma)。

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精選版 日本国語大辞典 「脂肪腫」の意味・読み・例文・類語

しぼう‐しゅシバウ‥【脂肪腫】

  1. 〘 名詞 〙 脂肪組織からなる良性腫瘍(しゅよう)。大きさ、形はさまざまで、脂肪組織のあるところにはどこにでも発生する。リポーマ。〔医語類聚(1872)〕

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六訂版 家庭医学大全科 「脂肪腫」の解説

脂肪腫
しぼうしゅ
Lipoma
(皮膚の病気)

どんな病気か

 皮下脂肪を構成する細胞と同様の脂肪細胞(脂肪を蓄えた細胞)が増殖して、しこりを形成したものです。通常、皮下脂肪のなかに生じる比較的ありふれた良性腫瘍です。

原因は何か

 成熟した脂肪細胞には増殖能はありませんが、成人になっても、脂肪細胞へと分化しうる未分化の細胞が毛細血管の周囲には至るところで残っており、脂肪細胞の供給源になっていると考えられています。腫瘍性増殖は、このような未分化の細胞に何らかの異常が生じたものと想定されますが、その機序(仕組み)については明らかではありません。

 しかし、脂肪腫の80%近くに何らかの染色体異常が見いだされているので、これらの染色体異常によって導かれた遺伝子異常が脂肪細胞への分化と増殖に関わっているものと推測されます。

症状の現れ方

 どこの部位にも現れますが、頸部(けいぶ)、肩甲部、上腕、背部、大腿などが好発部位です。通常の脂肪腫は自覚症状がなく、ゆっくり増大する軟らかなしこりです。痛みを感じるものは血管脂肪腫といい、脂肪腫の特殊なタイプです。

 初めは見た目の変化はなく、触ると皮膚の下に軟らかいしこりを触れるだけです。徐々に大きくなり、やがて隆起するようになると、体の輪郭を乱すようになります。しかし、皮膚の表面には異常はありません。肥満者に多く、体重が急に増える時に大きくなりやすいのですが、飢餓(きが)時に皮下脂肪が減っても、脂肪腫は小さくはなりません。

検査と診断

 触診により診断可能なものが大部分です。CTMRIなどの画像検査を行えば、診断はさらに確かなものになります。

治療の方法

 手術によって摘出します。

 気になる症状があれば皮膚科専門医を受診し、診断を確認したうえで手術を受けるかどうか決めるとよいでしょう。

田村 敦志

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家庭医学館 「脂肪腫」の解説

しぼうしゅ【脂肪腫 Lipoma】

[どんな病気か]
 脂肪組織の細胞が異常に増殖したものです。触れると軟らかく、皮膚面が全体的に盛り上がってみえます。成人の胴体(どうたい)、上腕、大腿(だいたい)にできることが多いようです。血管脂肪腫(けっかんしぼうしゅ)といわれる腫瘍(しゅよう)もよくでき、触れると痛みを感じます。
[検査と診断]
 超音波検査やMRI(磁気共鳴画像装置)検査を行なったうえ、手術で取り出した腫瘍を病理検査して診断を確定します。
[治療]
 局所麻酔をして、腫瘍を取り出す手術を行ないます。腫瘍が、かなり大きい場合や筋肉内などの深いところにある場合は、入院治療が必要なこともあります。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脂肪腫」の意味・わかりやすい解説

脂肪腫
しぼうしゅ
lipoma

皮下,筋肉組織内,漿膜下など,正常な状態で脂肪の存在する部位に発生する良性の腫瘍で,限局性,浸潤性に増殖する。腫瘍というより組織異常といえる。びまん型といって,手足や,背中などの体幹部の大きな面積を占めるものもある。浸潤性や成長速度などから,脂肪肉腫とまちがえることがある。脂肪腫にはこのほかに,結合組織性の被膜で包まれ,他の組織から隔離されていて,脂肪腫内に小血管の増殖を伴う血管脂肪腫,あるいは脂肪細胞が真皮内に増殖して母斑をつくる表在性脂肪腫性母斑がある。

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百科事典マイペディア 「脂肪腫」の意味・わかりやすい解説

脂肪腫【しぼうしゅ】

皮下や軟部組織に生じた,脂肪組織の増殖症。柔らかいこぶ様の腫瘤(しゅりゅう)が単発あるいは多発するが,悪性化することはない。自然退消することはほとんどなく,多くの場合,徐々に大きくなり,周辺組織を圧迫することがある。治療は手術による切除。

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