商業捕鯨と調査捕鯨(読み)しょうぎょうほげいとちょうさほげい

共同通信ニュース用語解説 「商業捕鯨と調査捕鯨」の解説

商業捕鯨と調査捕鯨

商業目的の捕鯨国際捕鯨委員会(IWC)が1982年に一時停止(モラトリアム)を決定し、日本は88年に撤退した。日本は商業捕鯨再開に向けて必要な科学的データの収集を目的に南極海や北西太平洋で調査捕鯨を続けてきた。南極海の調査捕鯨は2014年に国際司法裁判所中止を命じ、一時停止したが規模を縮小して再開。調査捕鯨の副産物として捕獲した鯨の肉が販売されている。IWCの管理対象外のツチクジラなど小型鯨類やイルカ漁業は日本沿岸で実施されている。(フロリアノポリス共同)

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知恵蔵 「商業捕鯨と調査捕鯨」の解説

商業捕鯨と調査捕鯨

商業捕鯨は、営利を目的にした捕鯨で、鯨肉・鯨油・ひげなどが商業利用される。一方、調査捕鯨は、クジラの資源数・生態などの科学的調査を目的にした捕鯨で、営利を目的にしない。現在商業捕鯨を行っている国は、アイスランドノルウェー、カナダ、インドネシアなどわずか。加えて、チュクチ(ロシア)やイヌイット(米国)の居住地で、先住民が生存のために一定数を捕獲できる「先住民生存捕鯨」が行われている。
日本もかつて大規模な商業捕鯨を行っていたが、1982年に国際捕鯨委員会(IWC)が、科学的再検討を前提に「商業捕鯨の一時停止」を採択したことを受け、停止。87年から、捕獲海域・上限数を設けた調査捕鯨を開始すると共に、IWCには商業捕鯨の再開を繰り返し提案した。60年代には、乱獲で絶滅の危機に瀕(ひん)した種も多かったが、現在は「南極海のクロミンククジラや北西太平洋のミンククジラ等について、若年齢の個体が多く、資源状況は健全」(水産庁)などという科学的調査の裏付けによる。
しかし、 IWCは調査・分析をもとにした科学的再検討を先送りし、日本を中心とする捕鯨国と米国、英国、オーストラリアを中心とする反捕鯨国との議論も平行線をたどった。 IWC加盟国89カ国のうち、捕鯨支持国は半数に満たない41カ国と見られており、2018年の第67回IWC総会でも、日本は商業捕鯨再開を含むIWC改革案を提案したが、反対多数で否決された。安倍晋三内閣はこれを受け、「商業捕鯨再開の可能性はない」と判断。IWCからの脱退と商業捕鯨の再開を18年12月に表明した。主要国際機関からの日本の脱退は、戦後としてはきわめて異例で、内外に波紋を広げた。商業捕鯨の再開は19年7月以降に予定されているが、IWCを脱退したため、捕獲可能な海域は領海や排他的経済水域(EEZ)に限られる。再開しても供給量が大幅に増加する可能性は低く、また需要量の見通しも不透明。加えて、反捕鯨国を中心とした国際社会からのより強い反発も不安視されている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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