ツチクジラ(読み)つちくじら(英語表記)Baird's beaked whale

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツチクジラ」の意味・わかりやすい解説

ツチクジラ
Berardius bairdii; Baird's beaked whale

クジラ目ハクジラ亜目アカボウクジラ科ツチクジラ属。体長は雄約 11.9m,雌約 12.8mに達する。体重は約 12tに達する。ハクジラ類ではマッコウクジラに次いで大きい。出生体長は 4.5m程度。体色は全身青みを帯びた灰色腹部はやや薄い。胸部から腹部にかけて白斑をもつものがいる。咬傷が白色の筋となり体表に多く残る。体型は長い紡錘形で嘴 (くちばし) は長く下顎が突き出る。噴気孔は1個で頭部正中線上にあり,噴気は丸い飛沫状で高さ 2m程度上がる。咽喉部にハの字状の長さ約 60cmの溝がある。背鰭 (せびれ) は小さく,体の後方3分の2に位置し,直角三角形状で,その先端は鈍い。尾鰭は大きく,幅は体長の4分の1程度で後縁中央がわずかに切れ込む。下顎に2対の歯があり,先端にある1対の歯は性的成熟に達すると突出する。5~20頭の群れで行動することが多いが,50頭以上の群れをなすこともある。潜水時間は通常 30分程度であるがまれに1時間をこえる。繁殖期は3~4月と推測される。おもに深海性イカ類や底生魚類を食べるが,ナマコ,ズワイガニなども捕食する。分布北太平洋に限られ,主として大陸棚斜面や海山近く,あるいはそれより深い外洋域に生息する。日本では小型捕鯨で太平洋岸の房総地方を中心年間 150~250頭ほど捕獲されていた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツチクジラ」の意味・わかりやすい解説

ツチクジラ
つちくじら / 槌鯨
Baird's beaked whale
[学] Berardius bairdi

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目アカボウクジラ科のハクジラ。頭部は丸く、吻(ふん)が棒状に伸びて、頭の形が木槌(きづち)に似ている。下顎(かがく)先端部に2対のおむすび状の歯があり、ほかの歯は退化している。体の前から3分の2の位置に直角三角形の背びれがある。体色は黒灰色で、成熟した雄は頭背部に闘争による歯形がつき、その部分は淡色となる。イカ類を主として、魚類その他の底生動物を食べる。北太平洋の特産で中・高緯度の近海域に分布する。これに対し、近似種は南半球海域に分布する。数頭から30頭の群れをつくって生活し、1000メートルの深海にまで、80分間も潜水できる。日本では17世紀から捕獲され、千葉県南部ではこの鯨(げい)種の肉の塩干し品が「たれ」と称して好んで食べられる。

[大隅清治]


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