喉頭下降(読み)こうとうかこう(その他表記)descended larynx

改訂新版 世界大百科事典 「喉頭下降」の意味・わかりやすい解説

喉頭下降 (こうとうかこう)
descended larynx

ヒトでは,一般哺乳類と違って,喉頭口腔の後ろではなく頸部中央まで下がっている現象のこと。その結果,声帯で発生した声を咽頭と口腔で調整して有節音声言語を話すことが可能である。その代わり,誤嚥や睡眠時無呼吸症のような障害を起こす遠因にもなった。すなわち,原人以前では,一般四足哺乳類でも同じように,歯列が前方に位置するので(おそらく脊柱頸部もかなり前傾するので),歯列と脊柱頸部との間に充分な余裕があり,そこに収まっている咽頭のスペースも大きい。したがって,喉頭が咽頭上部に(口腔の高さ)位置していたと考えられる。そうすると,鼻腔と喉頭が直結し,気道が常に確保される。しかし,声が鼻腔に抜けてしまい,言葉をしゃべれない。旧人以降では,歯列が後退し脊柱頸部も直立に近づくので,咽頭のスペースが狭くなり,喉頭が徐々に下がってきたと推定される。ただし,いつの時代に下がったかについては,化石の研究だけでは確証がなく,とくに旧人の代表であるネアンデルタール人の喉頭が下がっていたかどうか,つまりしゃべれたかどうかに関して対立する議論がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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