食物や唾液(だえき)などが、声門を越えて気道内に入ること。本来、食物や唾液は、口腔(こうくう)から咽頭(いんとう)へ送り込まれ、嚥下(えんげ)反射(飲み込み)によってさらに食道・胃へと送られるが、この一連の動作(摂食・嚥下)がなんらかの理由でスムーズに行われない場合に起こることがあり、ときに窒息や肺炎の原因となる。
摂食・嚥下の一連の動作の障害は、神経・筋疾患などの病気が原因で起こる場合もあれば、加齢に伴い徐々に機能が低下していくことなどでも起こる。これを摂食・嚥下障害といい、誤嚥の要因となるが、これらの障害がなくとも、誤嚥は健常者を含めだれにでも起こりうるものである。とくに水やお茶などのさらさらした液体は、口腔から咽頭に容易に流れ込みやすく、健常者であってもちょっとした油断で気管に入り、むせたり咳(せき)が出たりする。
誤嚥は食物や水分、唾液などの口から入るものだけでなく、胃食道逆流物(一度胃に送られた食物が、胃液とともに逆流して気管に入る)によって起こることもある。
誤嚥が起こると、むせ込みや咳、声がガラガラするなどの反応が現れることが多く、これを顕性誤嚥という。一方で、これらの反応が起こらない不顕性誤嚥もあり、むせ込みがないからといって誤嚥していないと判断することはできない。就寝中に自分の唾液や胃食道逆流物を誤嚥したときなどには不顕性誤嚥となることが多い。
本来は胃に送り込まれるはずのこうした誤嚥物が気管から肺に到達して肺炎を生じたものを誤嚥性肺炎といい、とくに高齢者や抵抗力の低下した人などに起こりやすい。また誤嚥による窒息は生命にかかわるリスクとなる。誤嚥の予防策として、食事時の姿勢を整える、はっきりと覚醒(かくせい)した状態で集中して食事をとる(覚醒レベルが低いままだったり、食事から気がそれていると誤嚥しやすい)、唾液や胃食道逆流物の誤嚥を防ぐ(頸部(けいぶ)前屈位を保つ、食後すぐに横にならない、就寝中も頭部を軽く挙上しておくなど)、また、誤嚥しても喀出(かくしゅつ)できるよう深呼吸や咳嗽(がいそう)訓練などを日ごろから行う、誤嚥しても肺炎を起こさないよう日ごろから体力をつけ口腔内の清潔を保つ、などがあげられる。
[編集部 2018年12月13日]
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