四肢切断術(読み)ししせつだんじゅつ(英語表記)amputation

改訂新版 世界大百科事典 「四肢切断術」の意味・わかりやすい解説

四肢切断術 (ししせつだんじゅつ)
amputation

治療のために,四肢をある部位で切り,それより末梢を切り離す手技。関節部での切断を関節離断術という。切断が必要となるのは,四肢の壊死悪性腫瘍重度外傷,感染(ガス壊疽(えそ)などで生命に危険がある場合や,慢性の難治性膿性骨髄炎で排膿が継続する場合など),あるいは奇形があるときである。切断の部位は,近年,義肢の製作,装置技術が進歩したことによって,かなり体幹に近い,高位の部分での切断が可能となったが,原則的には,なるべく長い断端を残す努力をすることになっている。切断の部位により,四肢切断術は,下肢では(1)中足骨部切断,(2)サイム切断(踝部),(3)下腿切断,(4)大腿切断に,上肢では(1)手関節切断,(2)前腕切断,(3)上腕切断,(4)肩関節切断,に分けられる。切断にあたっては,皮膚の縫合線と骨断端は重ならないようにし,筋肉は骨断端に孔をあけて縫合して,適度の緊張を保つようにする。骨形成術により,筋肉の萎縮を防ぐことができる。切断後は,なるべく早くリハビリテーションを受け,義肢装用の訓練を行うとよい。
リハビリテーション
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「四肢切断術」の意味・わかりやすい解説

四肢切断術
ししせつだんじゅつ

四肢の一部を切り離すことを切断といい、その手術法を四肢切断術という。関節で四肢を切り離すことは関節離断という。切断は、四肢の血栓栓塞(せんそく)、糖尿病、高度の挫滅(ざめつ)などによる壊死(えし)の場合、四肢の悪性腫瘍(しゅよう)、ガス壊疽(えそ)などの感染創など生命に危険を及ぼす疾患の場合に行われる。

 切断の部位は、その後の生活や職業にとって影響があるので、十分に検討して決定されるが、最近は義肢および義肢作製技術の進歩に伴い、できるだけ切断端を長くするのが原則となっている。また切断端は、義肢の装着がうまくできるように軟部組織で十分に覆われていること、断端に疼痛(とうつう)がないこと、浮腫などの血行障害のないこと、皮膚の癒着がないことなどが要求される。切断後は断端の拘縮を予防し、切断肢の運動を十分に保持することが必要で、切断後早期に訓練を開始する。義肢装着後も十分な訓練が必要である。すなわち、義手では動かすためのコントロール訓練、使用訓練、日常生活動作訓練などが行われ、義足では装着訓練、基本平衡訓練、平地歩行訓練のほか、斜面歩行、階段昇降などの応用訓練なども行わなければならない。

[永井 隆]

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