改訂新版 世界大百科事典 「図形入出力装置」の意味・わかりやすい解説
図形入出力装置 (ずけいにゅうしゅつりょくそうち)
コンピューターで図形処理を行うのに使用される装置。入力にはライトペン,グラフィックタブレット,ディジタイザー,ジョイスティック,マウスなど,出力にはグラフィックディスプレー,グラフィックプリンター,プロッターなどを用いる。形出力でもっとも多く使用されるグラフィックディスプレーgraphic displayは,陰極線管(CRT)の上に図形を表示するものであり,図形を描かせるための電子ビームのスキャン方法により,ランダムスキャン法とラスタースキャン法があり,また表示した像を管面上に保持しておくことができる蓄積管を使用したものと,像が残らないふつうのブラウン管を使用し,図形情報を蓄積したメモリーから繰り返し読み出して表示するリフレッシュ方式がある。
ランダムスキャン法では,表示する図形を直線,円弧などの要素図形に分解し,電子ビームがそれぞれの図形を描くような電圧波形を発生させて偏向電極に加え,これをつなぎ合わせてさまざまな図形を発生させる。ラスタースキャン法では,表示すべき図形をビットパターンに分解して画面メモリーに書き込み,通常のテレビと同様なラスタースキャンにより図形を表示する。ランダムスキャン方式では特殊な高精度CRTを必要とするので高価になるが,精密な図形を表示するのに適している。ラスタースキャン方式では通常のテレビ装置程度の低価格CRTでも図形表示が可能で,またドット密度を上げメモリーを大きくすれば実用的には十分の精度で図形表示ができる。とくにラスタースキャン方式では,カラーの表示や図形の塗りつぶしが容易に行えるので,広範囲のコンピューターグラフィックスのアプリケーションに使用される。
図形出力のハードコピーを作製する装置には,X-Yプロッターおよび各種のドットプリンターが使用される。高精度の図形をドットプリンターで出力するには,静電式,レーザービーム式などのノンインパクトプリンターが使用される。カラー図形出力用にはカラーX-Yプロッター,カラーインクジェットプリンターなどがある。
図形入力の装置のうち,ライトペン,グラフィックタブレット,ジョイスティック,マウスは,ディスプレー上の図形と対話的な処理を行いながら図形情報を入力する装置である。ディジタイザーはとくに高精度の図形入力を行うための大型のタブレットであり,図面上の点の座標と図形コマンド(例えば2点の座標とそれを結ぶ線分のコマンド,円の中心点の座標と半径と円を示すコマンド)の形で図形情報を入力する。このほか,不規則な図形や絵などのイメージ情報を入力するためには光学スキャナーが使用される。光学スキャナーは図形を光学的にスキャンして,ビットパターンに分解し入力する。カラーフィルターで三原色に分解してスキャンし,カラー図形を入力することも可能である。
→入出力装置
執筆者:林 英治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報