入出力装置(読み)にゅうしゅつりょくそうち(その他表記)input-output unit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「入出力装置」の意味・わかりやすい解説

入出力装置
にゅうしゅつりょくそうち
input-output unit

コンピュータシステムにデータを入れたり、システムからデータを出したり、あるいはその両方を行うための装置の総称。

 原票からコンピュータに入れるデータをつくるには、現在ではキーボード(鍵盤(けんばん))を用いて、直接、磁気ディスクに入れるのが普通である。移送する場合には磁気テープに移すこともある。しかし、コンピュータ以前のパンチカードシステムの時代から、つい先ごろまでは、入力媒体として穿孔(せんこう)カードが主として用いられていた。また、コンピュータが出現する以前より、電信関係に用いられていた穿孔テープも穿孔カードとともに入力媒体として用いられた。穿孔カードは縦8.26センチメートル、横18.7センチメートルの上質の紙カードで、1枚につき80字まで穿孔できる。カードにはカード穿孔機を用いて穿孔する。カード読取り装置は、光源と受光素子の間に穿孔カードを通し、穴の有無を受光素子で読み取り、電気信号に変換する。読取り速度は1分当り60枚から2000枚程度である。カード穿孔装置は、コンピュータからの出力をカードに穿孔する装置で、穿孔速度は1分当り10枚から400枚程度である。

 穿孔テープは幅2.54センチメートルの紙テープで、長手方向に垂直に穿孔位置が八つある八単位のものが主として用いられる。八単位以外にも五単位のものと六単位のものがあるが、これらは主として電信用である。テープ読取り装置は、光源と受光素子との間に穿孔テープを通し、穴の有無を受光素子で読み取り、電気信号に変換する。穿孔テープの幅の約10分の4の位置に長手方向にある小さな穴でテープを位置決めして送る。この穴をスプロケットホールsprocket hole(繰出(くりだ)し孔(こう))という。読取り速度は1秒当り5字から1200字程度である。テープ穿孔装置は、コンピュータの出力を穿孔テープに穿孔するための装置で、穿孔速度は1秒当り5字から350字程度である。

 印字装置には、機械的衝撃を用いるインパクトプリンターと、用いないノンインパクトプリンターがある。

 タイムシェアリングシステムとかパーソナルコンピュータなど、コンピュータを会話形式で用いる場合には、普通、入力装置としてキーボードが、出力装置としてブラウン管あるいは液晶を用いたディスプレー装置が用いられる。キーボードはキーを一定の規則に従って配列した盤で、そのキーを押すことにより対応した信号が送り出される。ディスプレー装置の表示面上の位置を指定するのに用いる装置をポインティング装置とかポインターという。代表的なポインティング装置としては、表示画面上を押さえることで位置を指示するタッチパネルまたはタッチスクリーン、表示画面上に置くことによって動作するライトペン、1本の棒の倒れた方向と角度で指示するジョイスティック、ボールの回転変位で指示するトラックボールやマウス、二次元の平面上の位置で指示するデジタイザーなどがある。

 プロッターは、ペンにより図形を描くための装置である。

 文字読取り装置としては、磁化されやすい性質の特殊インクで書かれた文字を磁気的に読み取る磁気インク文字読取り装置(MICR)、特定の字体で印刷された文字を読み取る印刷文字読取り装置、手書きの文字を読み取る手書き文字読取り装置がある。郵便番号読取り区分装置は、手書き文字読取り装置の代表例である。印刷文字読取り装置と手書き文字読取り装置は光学的に読み取るので、光学式文字読取り装置(OCR)という。読取りヘッドを手に持ってバーコードを走査し読み取る小型で廉価なハンドOCRがPOS(ポス)端末用として用いられている。漢字を読み取る装置も実用化へ向けて進んでいる。光学式マーク読取り装置(OMR)は、特定のカードまたはシートにつけられた印を光学的に読み取る装置である。

 音声応答装置は、肉声を単語あるいは文節単位に録音しておき、応答文によってこれらをつなぎ合わせて、応答文としての音声をつくりだす音声編集方式と、音声合成回路を用いて音声波形を合成して出力する音声合成方式がある。早くから音声応答に用いられているのが音声編集方式である。時報、天気予報などをはじめとして各方面に応用されている。入力としての音声を認識するための装置も、使用環境はかなり制約されるが自然に話した音声を認識する精度もかなりなものとなり、部分的にすでに実用化されている。

 コンピュータからの出力を記録しておき、それをふたたび入力データとして用いることができる装置として、磁気ディスク記憶装置、磁気テープ記憶装置、フロッピーディスクカセットテープ、CD-R/RW、MO、ストリーマーUSBメモリーなどがある。これらは、外部記憶装置または補助記憶装置として用いられる。

[土居範久]

『情報処理学会編『新版情報処理ハンドブック』(1995・オーム社)』『浅川毅著『基礎 コンピュータシステム』(2004・東京電機大学出版局)』『アイテック情報技術教育研究部編著『コンピュータシステムの基礎』第14版(2007・アイテック)』

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改訂新版 世界大百科事典 「入出力装置」の意味・わかりやすい解説

入出力装置 (にゅうしゅつりょくそうち)
input-output device

コンピューターで処理する情報と,人間の直接認識できる情報の変換を行うための装置。すなわち,人間の使用する文字,数字,記号などを符号化された電気信号に変換したり,図形や視覚パターンを電気的なビットパターン信号に変換する装置が入力装置であり,逆にコンピューターのデータを文字や図形として印刷したり,CRTディスプレーのスクリーン上に表示する装置が出力装置である。

 コンピューターへの入出力には,紙テープ,紙カードなどの媒体を使用する場合と,けん盤やディスプレーを使用して人間が直接行う場合がある。媒体を使用して入力を行う場合に入力用媒体を作成する装置をデータ作成装置と呼ぶ。また通信回線を介して遠隔地から入出力を行う装置をデータ端末装置という。

 媒体を使用する入出力装置としては次のようなものがある。さん孔(せん孔)テープを使用する紙テープリーダー,さん孔(せん孔)カードを使用するカードリーダー,印刷文字,あるいは手書き文字を読み取る光学文字読取装置(OCR.optical character readerの略),磁気インキで印刷された文字を読み取る磁気インキ文字読取装置(MICR.magnetic ink character readerの略),鉛筆などで書いたマークを読み取るマークカードリーダー,あるいはマークシートリーダー,磁気ストライプ入りカードを読み取る磁気カードリーダーなど,さらには磁気テープや磁気ディスクなどのデータファアル装置もデータの入出力のために使用されている。

 人間が直接データの入出力を行うための装置としては,文字,あるいは数字コードの入力を行うためのけん盤(キーボードkeyboard)が代表的である。人間の視覚に直接訴える出力装置は各種の表示装置(ディスプレー装置)があり,表示する情報の種類により数字表示装置numeric display,文字表示装置character displayおよび図形表示装置graphic displayがある。もっとも多く使用されているのはCRTの表面に表示するCRTディスプレーであるが,最近では平面パネル上に表示するものとしてプラズマパネルディスプレーplasma panel display,ELパネルディスプレーelectro luminescence panel display,液晶パネルディスプレーliquid chrystal panel displayなどが使用されるようになってきている。

 コンピューターの出力情報として紙の上に文字を出力するプリンターは,方式により次のように分類できる。(1)インキリボンの上から活字,またはハンマー,あるいはピンを紙に打ちつけて印字するインパクトプリンターと,それ以外のノンインパクトプリンター。1文字単位で逐次印字動作を行うシリアルプリンターと,1行単位で印字動作を行うラインプリンター。(2)文字の形を母型活字と同じ字形で印字する母型印字プリンターと,細かい点の集合で表すドットマトリックスプリンター。

 文字のみでなく図形やグラフを印刷する装置としてはX-Yプロッターおよび各種のドットマトリックスプリンターが使用される。このようにコンピューター出力の文字,あるいは図形を紙などの上に長時間保存できる形で出力したものをハードコピーhard copyと呼ぶ。これに対し表示装置上の出力をソフトコピーsoft copyということもある。

 図形をイメージ情報としてビットパターンでコンピューターで処理する場合の入力装置としては各種の光学スキャナーoptical scanner,出力装置にはドットマトリックスプリンターが使用される。ファクシミリ送受信機がこのような用途に入出力装置として使用されることもある。

 人間の音声をコンピューターの入出力として使用する例としては,音声認識による入力と音声合成による出力がある。また音声をディジタル化した信号をそのままコンピューターで処理したり,蓄積検索を行うシステムでは,電話器やマイクロホン,スピーカーを入出力装置とみなすことができる。

 このほか,各種の計測器,制御器,銀行の窓口装置やPOSシステムpoint of sale systemなどもコンピューターの入出力装置と考えられる。

 入出力装置の性能は,第1に情報の入出力速度で表される。プリンターであれば印字速度,すなわち毎秒印字字数,または毎分印字行数である。第2には扱う情報の広がりの大きさ,例えば印字できる文字の種類(数字,アルファベット,かたかな,漢字など)の多さ,すなわちキャラクターセットの大きさである。第3には情報の精度,例えば図形表示装置や図形入力用タブレットの分解能などである。

 初期のコンピューターシステムでは入力に主として紙テープ,あるいは紙カード,出力にラインプリンターを接続し,バッチ処理を主体としていた。コンピューターの処理能力の急激な向上に伴い,人間が直接コンピューターと対話的に処理を行うインタラクティブ処理用のディスプレー装置やデータ端末装置が使用されるようになり,さらには音声や手書き文字の認識,あるいは高度の画像情報を取り扱うコンピューターシステムが出現して,入出力装置の種類も多様化,高度化してきている。なお関連用語については用語解説も参照されたい・
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「入出力装置」の意味・わかりやすい解説

入出力装置【にゅうしゅつりょくそうち】

コンピューターの主要構成部分で,各種入力装置と出力装置の総称。カード,テープ,ディスクなどのせん孔または磁気符号,レーザー光として与えられた数値,データ,命令などを電気信号に変換し,コンピューターの内部に送り込むものが入力装置で,各種の文字読取機,磁気読取機などがある。人間が直接データを入力する装置には一般にキーボードが用いられるが,文字や音声を直接入力として取り扱う方法も研究されている。入力の結果を外部に知らせるものが出力装置で,ディスプレーのほか電気タイプライター,プリンター,電子印刷装置などがある。一般に入力(インプット)とは情報処理系に入っていく情報を,出力(アウトプット)とはそこから外部に出てくる情報を意味する。
→関連項目機械語端末装置マイクロコンピューター

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