日本大百科全書(ニッポニカ) 「国税総合管理システム」の意味・わかりやすい解説
国税総合管理システム
こくぜいそうごうかんりしすてむ
国の税務情報を全国一元的に蓄積・管理するオンラインシステム。「国税総合管理」のローマ字表記Kokuzei Sougou KanriからKSKシステムと略される。国税庁、全国12か所の国税局と国税事務所、全国に524ある税務署をコンピュータ・ネットワークで結び、国税事務の効率化のほか、申告漏れ対策、脱税摘発、滞納徴収などにつなげる。1989年(平成1)から導入準備を始め、1995年に京橋税務署(東京)と川崎北税務署(神奈川)に試行配備した。その後、東京、大阪、名古屋、関東信越国税局管内の税務署へと順次広げ、2001年(平成13)に全国への導入を完了した。
課税、徴収、債権管理など全24の業務システムからなる。申告書などの入力をOCR(光学文字読み取り装置)で処理し、各地の国税局、税務署と国税庁事務管理センターを結ぶことで、増え続ける税務作業の効率的な処理が可能になった。納税者ごとの申告・納税・取引先データや決算実績などを各地の国税局や税務署の端末から検索することもでき、類似業種のなかから申告漏れの疑いのある企業の割り出しや、グループ企業間の不明朗な資金の流れの解明など、税務情報を広域・多角的に分析・処理できるようになった。これにより機動的な税務調査や滞納整理案件の抽出が可能になったとされる。また導入前に比べ、納税証明書の発行や還付金の振り込みも迅速になり、納税者の利便性が向上した。
しかし、国税総合管理システムの導入にあたり、1989年から最初の3年間は競争入札(落札額160億円)が実施されたが、その後10年間は随意契約(契約額2978億円)で発注されており、発注業者選定の基準が不透明なうえ、経費削減努力がみられないなどとの批判を浴びた。2004年以降は経費削減や効率化のため業務システムのオープン化を進めたが、全24業務システム中15システムをオープン化しただけで、残る9業務システムについては税務情報のセキュリティなどを理由にオープン化されていない。2009年には民主党政権が実施した事業仕分けで予算規模の縮減対象となった。
[編集部]