国の税務行政組織の一つ。国税庁は、第二次世界大戦後の税務行政の混乱状態に対処するため急速に機構が拡大した大蔵省主税局から、税務執行面を分離し、内国税(関税、とん税および特別とん税を除く)に関する賦課徴収を担当する行政機関として設置された。これにより、国税庁-国税局-税務署という系統的な税務機構が確立されることとなった。大蔵省主税局は租税制度の調査、企画、立案を担当する機関であり、また、関税、とん税および特別とん税に関する制度の調査、企画、立案およびその賦課徴収を担当する機関として、大蔵省の関税局とその下部機関である税関がある。なお、2001年(平成13)1月6日に大蔵省は財務省と名称変更された。
国税庁の下には、全国に11(東京・関東信越・大阪・札幌・仙台・名古屋・金沢・広島・高松・福岡・熊本)の国税局、沖縄国税事務所と524の税務署がある。国税庁は、長官官房、課税部、徴収部および調査査察部の4部局に分かれ、税務行政を執行するための企画・立案や税法解釈の統一を行い、これを国税局に指示し、国税局と税務署の事務を指揮監督する官庁である。沖縄国税事務所は、沖縄の復帰に伴って1972年(昭和47)5月15日に創設され、国税局とほぼ同様の機能を有しているが、その規模は国税局より小さく、部は置かれていない。
税務署は、内国税の賦課徴収を行う第一線の行政機関で、納税者ともっとも密接なつながりをもつところである。各税務署長はそれぞれの管轄区域内で、すべての内国税の賦課徴収を行う権限をもっている。その機構は規模の大小によって異なっているが、一般的には署長の下に、(1)税務署内の調整、庶務、会計事務を担当する総務課、(2)内国税の債権管理事務、滞納整理事務を担当する管理・徴収部門、(3)所得税、個人事業者の消費税および資料情報事務を担当する個人課税部門、(4)相続税、贈与税を担当する資産課税部門、(5)法人税、法人の消費税、源泉所得税および間接諸税を担当する法人課税部門が置かれている(もっとも小規模な税務署においては、総務課と調査部門の1課1部門制がとられている)。各部門には、統括国税調査官(統括国税徴収官)が置かれており、おおむね7~10人の職員を統括している。
[林 正寿]
大蔵省(2001年より財務省)の外局である国税庁は,内国税(国税のうち,関税,とん税,特別とん税を除いたもの)の賦課徴収の事務を行うが,その出先機関として全国に11局の国税局(および沖縄国税事務所)がある。税務署は,この国税局の所掌事務を分掌するもので,全国に524設けられている(2008)。税務署は1896年に税務監理局官制によって大蔵省直轄の徴税機関としてはじめて設置された。当時において国税局に相当するものは,税務管理局と呼ばれ,その後税務監督局,財務局と名称が変わり,1949年に国税庁の設置により国税局となり現在に至っている。税務署は税務署長を長として直接賦課徴収を行っている。大半の税務署は,(1)総務課,(2)税務広報官,(3)管理・徴収部門,(4)個人課税部門,(5)法人課税部門,(6)酒類指導官を有する(1991年に広報体制の整備,税目別から納税者別への部門改編を骨格とする機構改革を行った)。なお,大納税義務者等の所得税,法人税等の課税標準の調査および検査ならびに重要な犯則の調査取締りで国税局の調査査察部の所掌に属しているものについては,税務署は権限を有しない。ちなみに,地方税の事務については,道府県税は税務事務所において取り扱い,市町村税は,市町村の役所または役場において取り扱われている。
執筆者:武田 昌輔
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…その後11局は統合がすすみ,98年には主計局,主税局,理財局の3局となり現在の大蔵省の原型が整ったが,こののちも時代の趨勢とともにいくつかの機構が新設された。日清戦争後,政府は軍備拡充を急務とし,増税を実施したが,それにあたり地方に委任されていた国税徴収事務を大蔵省で一元的に統轄するために,96年各地に税務管理局,税務署を設置した。また財源増のため葉たばこ(1898),樟脳(1903),たばこ(1904),塩(1905)をそれぞれ専売事業とし,1907年9月には各専売機関を統一して専売局を新設した。…
…大蔵省は租税に関する立法事務と賦課徴収事務を行うが,後者については国税庁がその任に当たっている(国家行政組織法および大蔵省設置法)。国税庁の主たる権限は,内国税(関税,とん税,特別とん税以外の国税)の賦課徴収,つまり税務行政であって,その配下にある国税局(地方支分部局で全国に11局ある),税務署を指揮,監督する。このために国税庁長官は税法の解釈に関する通達,訓令を発する。…
※「税務署」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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