地域貿易協定(読み)ちいきぼうえききょうてい(英語表記)regional trade agreements

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

地域貿易協定
ちいきぼうえききょうてい
regional trade agreements

特定地域内の複数の国・地域の間で、物やサービスなどの移動をほぼ完全に自由にしようというFTA(自由貿易協定)や関税同盟の総称。英語名の頭文字をとって略称はRTAs。1958年にヨーロッパ経済共同体(EEC)設立を決めたローマ条約が第1号とされる。現在のヨーロッパ連合(EU)、アメリカ、カナダ、メキシコによるNAFTA(ナフタ)(北米自由貿易協定、1994年発効)、ロシアと周辺諸国によるユーラシア経済同盟(2015年発足)、ブラジルやアルゼンチンなどによるメルコスール(南米南部共同市場、1995年発足)、日米など12か国が大筋合意したTPP(環太平洋経済連携協定)などがこれに該当する。世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が先進国と新興国との利害対立などで頓挫(とんざ)するなか、交渉が妥結しやすい地域単位の自由化を優先する動きが加速し、地域貿易協定は急増している。世界の地域貿易協定の数はWTOへの通報ベースで、1990年代前半には50台であったが、2000年末に100を超え、2016年1月時点では635に増えている。
 経済学的に地域貿易協定には、域内関税などの貿易制限を撤廃する「FTA」、域内の制限撤廃に加え域外に共通関税をかける「関税同盟」、さらに労働力や資本の移動制限も撤廃する「共同市場」、共同市場を基に金融・財政・通貨政策を調整する「経済同盟」などがある。WTOはすべての加盟国・地域を無差別に扱う最恵国待遇を基本としており、特定国間の自由化は原則として容認していない。しかし地域貿易協定については貿易自由化に役だつとの判断から、物の貿易についてはガット(GATT、関税および貿易に関する一般協定)第24条、サービス貿易についてはガット第5条に定めた条件を満たせば、認められている。ただ地域貿易協定の急増は、原産地規制などの異なるルールの乱立を招き、貿易自由化を阻害しかねないとの批判がアメリカなどから出ている。[矢野 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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