RCEP(読み)あーるせっぷ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「RCEP」の意味・わかりやすい解説

RCEP
あーるせっぷ

日本、中国、ASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合諸国などアジア・太平洋地域の国々の自由貿易協定(FTA)。英語のRegional Comprehensive Economic Partnershipの頭文字をとって、RCEP(アールセップ)と略される。日本では東アジア地域包括的経済連携ともよばれる。日本、中国、ASEAN10か国のほか韓国、オーストラリアニュージーランドの15か国が2020年(令和2)に協定締結で合意。ASEANのうち6か国と非ASEAN3か国が承認すれば発効するが、発効時期は未定。当初から交渉に加わったインドは最終局面で離脱した。域内人口は約23億人(2020年国連推計)、域内総生産は約25兆ドル(2018年国連統計)と世界のほぼ3割を占める世界最大級のメガFTAである。2013年(平成25)から交渉を始め、工業品や農産物関税の削減・撤廃、投資、サービス貿易、知的財産の保護、国境を越えた自由な電子商取引(EC)の確保など18分野で合意した。通常、FTAは関税撤廃を原則とするが、RCEPは「参加国の異なる発展段階を考慮し、特別のかつ異なる待遇や追加的な柔軟性」を認める緩やかな協定である。米中貿易戦争など世界的に保護主義が蔓延(まんえん)するなか、RCEPはTPP環太平洋経済連携協定)と並び、アジア・太平洋地域の自由貿易を発展させる要(かなめ)として関心を集めている。日本にとっては中国、韓国との初のFTAである。

 2005年に中国が提唱した東アジア自由貿易圏構想(ASEAN+日本、中国、韓国)と、2007年(平成19)に日本が提唱した東アジア包括的経済連携構想(ASEAN+日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)を包含した自由貿易圏構想である。2012年の東アジア首脳会議で交渉開始を決議し、TPPに不参加の中国、韓国などがRCEPの実現に積極的だった。安価な中国製品流入を警戒したインドは最終局面で離脱したが、いつでも復帰できるように、ほぼ無条件でインド即時加入を認める特別規定を設けている。RCEPの発効で域内関税の91%(品目ベース)が段階的に撤廃され、日本から中国向け輸出では撤廃率を8%から86%へ、韓国向けは19%から92%へ段階的に引き上げる。日本の米、麦、牛肉豚肉乳製品、砂糖の5品目は輸入自由化の例外扱いである。

[矢野 武 2021年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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