日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーラシア経済同盟」の意味・わかりやすい解説
ユーラシア経済同盟
ゆーらしあけいざいどうめい
Eurasian Economic Union
2010年に関税同盟を発足させたロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3か国が経済協力体制をさらに強化するために設立した経済同盟。略称EEU。2014年5月にカザフスタンの首都アスタナで3か国の大統領が創設に合意した。それぞれ議会の批准を経て、2015年1月に発足。同月にアルメニア、5月にキルギスが加盟し、5か国となった。域内における経済活動に対する加盟国の規制を緩和していき、2025年に商品、サービス、資本、労働力などを完全に自由化することを目ざす。旧ソ連圏諸国を中心に、最終的にはヨーロッパ連合(EU)のような主権国家群で構成する経済連盟を目ざし、共通通貨の発行も視野に入れている。ロシアが同盟を主導し、アメリカとEUに対抗するため、国際社会における旧ソ連圏諸国への影響力の拡大を目ざす政治的なねらいもあるといわれる。しかし、旧ソ連でロシアに次ぐ大国であるウクライナ共和国の取り込みに失敗し、中心的存在であるロシアの経済が悪化するなど、同盟が順調に発展しているとはいえない。
2015年5月にロシアを訪問した中国国家主席習近平(しゅうきんぺい)は、「ユーラシア経済同盟」と連携を強化する共同声明に署名した。習政権が推進する一帯一路構想と接続させることで、周辺諸国のインフラ施設の整備と経済の全面的な成長を促進する方針を確認した。ユーラシア経済同盟は、将来的には中国と自由貿易圏を創設する構想もある。
[矢板明夫 2018年3月19日]