改訂新版 世界大百科事典 「地理志」の意味・わかりやすい解説
地理志 (ちりし)
Dì lǐ zhì
中国,正史の志の中で,地理的叙述を行っている部分。24の正史のうち,《漢書》《後漢書》《晋書》《宋書》《南斉書》《北魏書》《隋書》《新唐書》《旧唐書》《新五代史》《旧五代史》《宋史》《遼史》《金史》《元史》《明史》の16に1~7巻の地理志が含まれる。なおこのうち郡国志(《後漢書》),州郡志(《宋書》《南斉書》),地形志(《北魏書》)などと呼称に差異があるが実質は同じである。前漢帝国における行政組織の整備とともに,郡県制を中心とした全国の地理的事実を正史の志の一部門として記載することが慣例となった。《漢書》地理志は,首都圏京兆尹(けいちよういん)に始まる103郡国につき,元始2年(紀元2)の戸口をあげ,1587の県について,簡単な沿革,山川や塩官,鉄官などの所在をのせる。以後の地理志もこの形を踏襲し,州県の等級,貢物(特産品)などを加える。とくに同種の史料の少ない,隋以前の地理志はきわめて重要な研究材料である。なお地理志のない正史の多くについて,清朝の学者が補欠本を作っている。
→地方志
執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報