地磁気変動(読み)ちじきへんどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地磁気変動」の意味・わかりやすい解説

地磁気変動
ちじきへんどう

地球磁場の比較的短期間の変動で、大別すると磁気擾乱(じょうらん)と静穏日の日周変動に分類される。いずれも、電離層および地球磁気圏を流れる電流の変化によっておこる。

小口 高]

静穏日の日周変動

静穏な日の地磁気の変動は、低緯度地方で真昼に北向き、中・高緯度地方で真昼に南向きに変化するのが特徴である。この変化は、太陽に照らされた昼の部分から夜のほうに向かって超高層大気中に風が吹き、その風が地球磁場を横切るために発電作用がおこり、その結果、主として昼間の電離層中に渦電流が流れているためである。

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磁気擾乱

地球磁場のわりあいに規則的な日周変動とは異なり、突発的に変動する部分が磁気擾乱とよばれる。磁気擾乱はいくつかの特有な変動に分類される。

(1)磁気嵐(あらし) 全地球的規模で1~2日にわたって地磁気水平分力が数100ナノテスラ程度減少する(中低緯度でみたとき)変動である。大きな太陽フレアがおこったあと2~3日後におこることが多いが、太陽風の構造によっておこるものもある。後者は太陽の自転周期によって27日ごとに繰り返すことが多い。前者は磁気嵐の発達に先だって2~3分の間に全世界的に水平分力が増加する磁気嵐急始部をもつことが多いが、後者ではこれを欠く。

(2)極磁気嵐 磁気嵐の発達段階(磁気嵐主相)には、主として夜の極光帯オーロラの爆発的な発達がみられ、これに伴って局所的に大きな(1000ナノテスラ程度)磁場変動がおこる。これを全地球的な磁気嵐と区別して極磁気嵐とよぶ。極磁気嵐は、太陽風中の磁場の南北成分が南向きに変わってから数十分後に発達する。

(3)極冠域磁場変動 極光帯より高緯度の地域では、極磁気嵐の発達に先だって、夕方で北向き、朝方で南向きの磁場変動が発達することが多い。この種の磁場変動は太陽風中の磁場の南北成分に著しく依存し、南向きのとき強まり、北向きで弱まること、また、長期間北向きが続くときには磁場の変動の向きが逆転することが知られている。

(4)太陽フレア効果 大きな太陽フレアがおこると数分間磁場変動に太陽フレア効果がおこる。太陽フレア効果は、そのときの静穏日日周変化を増加させる向きに現れる。

(5)地磁気脈動 周期1秒から1000秒程度までのわりあいに規則的な磁場変動を地磁気脈動とよぶ。連続的におこるわりあいに規則的なPc(Pulsation continuousの略。連続脈動の意)と、不規則な波形をもつPi(Pulsation irregularの略。不規則脈動の意)とに大別される。これらの地磁気脈動は磁気嵐のあと2~3日にわたっておこることが多い。

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磁気擾乱の原因

磁気擾乱の原因はいずれも電離層と磁気圏における電流の変化で理解されている。太陽フレア効果は太陽フレアに際して増加する太陽からの紫外線の放射により、電離層の電気伝導度が短時間の間上昇し、日周変化をおこす電流が短時間増加するためにおこるものである。磁気嵐急始部の磁場の増加は、太陽風内の衝撃波などによるプラズマ圧の急増で地球磁気圏が圧縮され磁気圏表面を流れる電流が増加するためにおこる。また磁気嵐主相の磁場の減少は、オーロラ活動などに伴って磁気圏尾で加速された荷電粒子が、後ろから地球に近づき、地球周辺の磁場にとらえられて、地球を取り巻くドーナツ形の領域に西向きの電流を形成し、そのためにおこることが知られている。極磁気嵐に対応する電流は磁気圏尾の朝方から朝方の極光帯に流れ込み、夜のオーロラ活動域を西向きに流れて、夕方の極光帯からふたたび磁気圏に流れ出す電流によって理解される。極磁気嵐の発達に先だって極冠域にみられる磁場変動は、磁気圏内のプラズマ対流に関連して、磁気圏の朝方で電位が上がり、夕方で電位が下がることに対応して、極冠域の電離層中に二つの渦電流が生まれることによるものである。この渦電流は、地上からではわからない磁力線沿いに流れる電流(沿磁力線電流)と密接に関連していることが衛星観測によって知られている。地磁気脈動はその多くのものは太陽風から供給される磁気流体波や、磁気圏表面あるいは内部で生成される磁気流体波が電離層に伝播(でんぱ)して電離層電流の変動をおこすためであると理解されているが、ある種の不規則な脈動は、オーロラ粒子の入射によって電離層の電気伝導度が変動するためにおこることが知られている。

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