坂の上の雲(読み)サカノウエノクモ(その他表記)Clouds Over The Hilll

デジタル大辞泉 「坂の上の雲」の意味・読み・例文・類語

さかのうえのくも〔さかのうへのくも〕【坂の上の雲】

司馬遼太郎の長編歴史小説。開国後の近代化への道のりと日露戦争終結までの歴史を、秋山好古真之兄弟と正岡子規中心に青春群像劇として描く。昭和43年(1968)から昭和47年(1972)にかけて「産経新聞」に連載単行本は全6巻を刊行。テレビドラマ化もされた。

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知恵蔵 「坂の上の雲」の解説

坂の上の雲

司馬遼太郎の長編史小説。産経新聞夕刊に昭和43(1968)年4月22日から昭和47(1972)年8月4日まで計1296回、4年余り連載された。単行本全6巻(文藝春秋1969~72年初版)、文庫本全8巻(文春文庫1978年初版)。売上部数は2千万部を超える。
主人公は、明治維新の頃に生まれた伊予松山の3人の若者である。自ら育成した日本騎兵を率い、中国大陸でロシアのコサック騎兵を打ち破って日本の勝利に貢献した陸軍軍人の秋山好古。その弟で、連合艦隊の参謀となり、東郷平八郎のもとで「旅順港閉塞」「七段構え」などの作戦を立案し、日本海海戦でバルチック艦隊を破った秋山真之。真之の友人で、結核と闘いながら35歳で世を去った近代俳句・短歌の祖、正岡子規。
構想に5年が費やされたこの長編小説は、明治維新から日露戦争勝利への38年間を描き、子規の死を描いた章『十七夜』を境に前半と後半に分かれる。前半は秋山好古・真之兄弟と正岡子規を主人公に、彼らが脆弱(ぜいじゃく)な近代国家「日本」を支えるために、自ら国家を担う気概を持って、真剣に楽天的に生きるさまを描いた青春群像小説。
後半は秋山兄弟が深くかかわった日露戦争の描写が中心で、児玉源太郎、東郷平八郎、乃木希典などの将官たちの姿や、当時の世界情勢、満州や日本海での各戦闘が時系列で述べられ、「日本にとっての日露戦争の意味」を読者にわかりやすく俯瞰(ふかん)的に説明している。
タイトル『坂の上の雲』とは、日本を欧米的近代国家にしようと、自らの目的を疑うことを知らずに奮闘する楽天的な明治人たちを、作者が「楽天家たちは、そのような時代人としての体質で、前をのみ見つめながらあるく。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、それをのみ見つめて坂をのぼってゆくであろう」(『坂の上の雲』あとがき 文春文庫)とたとえたところからきている。
なお、松山市内には「坂の上の雲ミュージアム」「子規記念博物館」「秋山兄弟生誕地」などの史跡がある。2009年11月からは、3年間、NHKスペシャルドラマも放映される。

(島村由花  コラムニスト / 2009年)

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デジタル大辞泉プラス 「坂の上の雲」の解説

坂の上の雲

司馬遼太郎の長編小説。代表作のひとつ。1969年~1972年刊行。秋山好古・真之兄弟と正岡子規を主人公に据え、近代日本の勃興と日露戦争を描く。2009年~2011年に3部に分けてNHKでドラマ化された。

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