垂乳根(読み)タラチネ

デジタル大辞泉 「垂乳根」の意味・読み・例文・類語

たらちね【垂乳根】

枕詞「たらちねの」から》
母。母親
「―の消えやらで待つ露の身を風より先にいかでとはまし」〈増鏡新島守
親。両親父母
「―はいかに哀れと思ふらむ三年になりぬ足たたずして」〈今鏡・六〉
父。父親
「―もまた垂乳女たらちめもうせはてて頼む陰なき歎きをぞする」〈拾玉集・一〉

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精選版 日本国語大辞典 「垂乳根」の意味・読み・例文・類語

たらちね【垂乳根】

  1. [ 1 ] ( 枕詞「たらちねの」から )
    1. 母。
      1. [初出の実例]「筑波嶺の新桑繭の衣はあれど君が御衣(みけし)しあやに着欲しも(一云)多良知禰能(タラチネノ)」(出典万葉集(8C後)一四・三三五〇)
      2. 「たらちねのためと思へば急がれて」(出典:謡曲・海人(1430頃))
    2. 父でも母でも、また両親の場合をも含めて、親をさしていう。
      1. [初出の実例]「忘るなと契り置きけんたらちねも笑(え)みて見るらん雲の上にて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
    3. 特に、父親をさす。母をさすのに「たらちめ」という語ができてから、これと対応して用いられる。たらちお。〔綺語抄(1107‐16)〕
  2. [ 2 ] 落語大家(おおや)の世話で八五郎がもらった嫁が、古典的でていねいすぎることばを使うおかしみを表現。さげは地口(じぐち)落ち。別名「たらちめ」「延陽伯」。

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