化学辞典 第2版 「塩化モリブデン」の解説
塩化モリブデン
エンカモリブデン
molybdenum chloride
【Ⅰ】塩化モリブデン(Ⅱ):MoCl2(166.84).二塩化モリブデンともいう.MoCl4とMoを600 ℃ に熱して得られる.黄色の無定形固体.密度3.71 g cm-3.MoCl2と書かれるが,実際は [Mo6Cl8]4+ を含むクラスター化合物[Mo6Cl8]Cl4である.水に不溶,塩酸,硫酸に可溶,エタノール,エーテルに可溶.[CAS 13478-17-6]【Ⅱ】塩化モリブデン(Ⅲ):MoCl3(202.30).三塩化モリブデンともいう.Mo2Cl10を400 ℃ で水素気流中で還元すると無水物が得られる.赤褐色の無定形粉末.密度3.57 g cm-3.水,エタノール,エーテルに不溶,濃無機酸に可溶.水和物は三水和物が普通で,赤色と緑色のものがある.水,エタノール,アセトンに溶け,濃赤色溶液となる.[CAS 13478-18-7]【Ⅲ】塩化モリブデン(Ⅳ):MoCl4(237.75).四塩化モリブデンともいう.酸化および加水分解をきわめて受けやすい.たやすく昇華して黄色の蒸気となる.褐色の粉末.空気中または CO2 中でさえも不安定である.潮解性があり,水とは音を立てて反応するが,エタノールには分解せずに溶ける.[CAS 13320-71-3]【Ⅳ】塩化モリブデン(Ⅴ):Mo2Cl10(273.20).五塩化モリブデンともいう.金属モリブデンを塩素気流中500 ℃ で熱して生じる暗赤色の気体を冷却すると得られる.暗緑色の結晶.密度2.92 g cm-3.融点194 ℃,沸点268 ℃.1300 ℃ 以上で分解する.常磁性,潮解性があり,かなり揮発性である.ベンゼンおよび極性有機溶媒に可溶で,溶液中では単量体,エタノール,エーテルなどのなかではオキソ錯体となる.水で加水分解する.塩素化剤,モリブデン触媒の原料,電子材料などに用いられる.[CAS 10241-05-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報