リン酸水素カルシウム(読み)りんさんすいそかるしうむ(英語表記)calcium hydrogen phosphate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸水素カルシウム」の意味・わかりやすい解説

リン酸水素カルシウム
りんさんすいそかるしうむ
calcium hydrogen phosphate

リン酸の水素カルシウム塩(いわゆる酸性カルシウム塩)。次の2種類のものがある。

(1)リン酸一水素カルシウムcalcium secondary phosphate 第二リン酸カルシウムともいう。化学式CaHPO4、式量136.06。リン酸二水素カルシウムの水溶液に、リン酸水素二ナトリウムを加え、生成した沈殿水中に放置すると二水和物CaHPH4・2H2Oの無色結晶が得られる。式量172.1。工業的には石灰乳にリン酸を反応させて製造する。二水和物には六方晶系、斜方晶系単斜晶系のものがある。109℃で二分子の水がとれ、さらに加熱するとピロリン酸カルシウムCa2P2O7になる。水にはほとんど溶けないが酸には溶ける。エタノールエチルアルコール)には不溶。肥料、栄養剤、医薬品、歯みがき用基材など多方面にわたる用途がある。

(2)リン酸二水素カルシウムcalcium dihydrogenphosphate 第一リン酸カルシウムともいう。化学式Ca(H2PO4)2、式量234.1。リン酸に炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムを溶解させ、溶液を蒸発濃縮すると一水和物Ca(H2PO4)2・H2Oが結晶(三方晶系)する。式量252.1。比重は16℃で2.220。リン酸カルシウムに計算量の硫酸を加えても得られる。工業的には燐(りん)鉱石原料として用い、副生する硫酸カルシウムとの混合物(過リン酸石灰)をそのまま肥料として用いる。一水和物は無色の結晶で109℃で脱水し、200℃で分解してメタリン酸カルシウムCa(PO3)2になる。30℃で水100グラムに1.8グラム溶けるが、熱水では分解する。エタノールには溶けない。水溶性の肥料として重要であり、エナメルやガラスの製造にも用いられる。

[鳥居泰男]

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