酸化剤(読み)さんかざい(英語表記)oxidizing agent

精選版 日本国語大辞典 「酸化剤」の意味・読み・例文・類語

さんか‐ざい サンクヮ‥【酸化剤】

〘名〙 酸化作用をもつ物質酸素を与える物質、水素をうばう物質、電子を受け取る物質をいう。過マンガン酸カリウムなど。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「酸化剤」の意味・読み・例文・類語

さんか‐ざい〔サンクワ‐〕【酸化剤】

他の物質を酸化しやすく、自身還元されやすい物質。酸素オゾン塩素二酸化マンガン過酸化水素硝酸など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化剤」の意味・わかりやすい解説

酸化剤
さんかざい
oxidizing agent
oxidant

他の物質を酸化する能力をもつ物質、酸素を放出しやすい物質、他の物質から電子を奪いやすい物質が酸化剤となる。以下におもなものを示す。


〔過マンガン酸塩〕
 過マンガン酸カリウムKMnO4など
クロム酸類〕
 重クロム酸カリウムK2Cr2O7, 酸化クロム(Ⅵ) CrO3など
〔硝酸類〕
 硝酸HNO3, 硝酸カリウムKNO3など
ハロゲン
 フッ素F2, 塩素Cl2, 臭素Br2, ヨウ素I2
〔過酸化物〕
 過酸化水素H2O2, 過酸化ナトリウムNa2O2など
〔酸化物〕
 酸化銅(Ⅱ) CuO, 酸化鉛(Ⅳ) PbO2, 酸化マンガン(Ⅳ) MnO2など
〔金属塩類
 塩化鉄(Ⅲ) FeCl3, 硫酸銅(Ⅱ) CuSO4など
〔酸素類〕
 空気,酸素O2, オゾンO3
〔硫酸類〕
 熱濃硫酸H2SO4, 発煙硫酸+硝酸
〔その他〕
 ニトロベンゼンC6H5NO2など

 上に示した酸化剤のなかでも過マンガン酸カリウムは、酸化還元滴定に用いられ、よく知られている。

 酸化剤に酸化される物質は還元剤であるが、酸化還元反応は相対的であり、同じ物質でも相手によって酸化剤にもなり、還元剤にもなる。たとえば、H2O2+2I-+2H+→I2+2H2Oのように過酸化水素H2O2は、酸性溶液中でヨウ化物イオンを酸化する酸化剤として作用するが、より強い酸化剤である過マンガン酸イオンには還元剤となって酸化される(5H2O2+2MnO4-+6H+→5O2+2Mn2++8H2O)。

[岩本振武]

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改訂新版 世界大百科事典 「酸化剤」の意味・わかりやすい解説

酸化剤 (さんかざい)
oxidant
oxidizing agent

物質を酸化させる試薬。酸化剤になりうるものは,物質に酸素を与えるものと,水素を奪う力のある物質とがある。酸化剤の作用は,酸化剤に含まれる酸化数が減少しやすい原子の還元によって,相手側の物質が酸化されることによる。よく知られた酸化剤に過マンガン酸カリウムKMnO4がある。KMnO4は酸化数Ⅶのマンガン原子を含み,その水溶液はMnO4⁻にもとづく赤紫色を呈する。この酸性溶液は,酸化数ⅡのマンガンイオンMn2⁺になりやすい。したがって過マンガン酸カリウムの酸性溶液は,相手側の物質として添加した鉄(Ⅱ)イオンFe2⁺を酸化する。すなわち,

 2MnO4⁻+16H⁺+10Fe2⁺─→2Mn2⁺+10Fe3⁺+8H2O

となり,Fe2⁺はFe3⁺となって酸化される。そして溶液中ではMnO4⁻からMn2⁺となって,溶液はうすい桃色になる。このような特性を示す酸化剤としては,表のような物質がある。
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百科事典マイペディア 「酸化剤」の意味・わかりやすい解説

酸化剤【さんかざい】

他の物質を酸化して,自らは還元される物質。空気,酸素,オゾンなどのほか,酸素を放ちやすい化合物(過酸化水素,酸化銀,二酸化マンガン,硝酸,過マンガン酸およびその塩類,クロム酸およびその塩類など)や,塩素などのハロゲン,酸化数の高い化合物など。
→関連項目ハイブリッドロケット

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化学辞典 第2版 「酸化剤」の解説

酸化剤
サンカザイ
oxidizing reagent

ほかの物質を酸化し,みずからは還元される物質.酸素,オゾン,過酸化水素,過酸化物,酸化銅,酸化銀,酸化水銀,普通の酸化数よりも高い酸化数をもつ元素の酸化物(CeO2,MnO2,PbO2),酸素酸(亜硝酸,硝酸,過マンガン酸,クロム酸,塩素酸,次亜塩素酸,過塩素酸)およびその塩類,熱濃硫酸,王水(硝酸と塩酸の混合物),ハロゲン,高原子価金属イオン(Fe3+,Cu2+,Sn4+)を含む塩などがある.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化剤」の意味・わかりやすい解説

酸化剤
さんかざい
oxidizing agent

酸化を起させる物質。すなわち酸素を与える作用,水素を奪う作用,また電子を奪う作用をもつものをいう。一般に用いられる酸化剤としては空気,酸素,オゾン,過酸化水素,酸化度の高い酸化物 (二酸化マンガン,二酸化鉛など) ,酸素酸 (硝酸,過マンガン酸,クロム酸など) とその塩類,ハロゲン (塩素,臭素,ヨウ素) などがある。そのほか濃硫酸なども温度を上げて使うと酸化剤になる。

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栄養・生化学辞典 「酸化剤」の解説

酸化剤

 物質を酸化する活性のある物質.物質を酸素と結合させるもの,物質から水素を奪う活性のあるものなど.

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世界大百科事典(旧版)内の酸化剤の言及

【還元剤】より

…そのほか第一鉄塩,第一スズ塩,硫化物,フェロシアン化物,低い酸化状態のチタン,バナジウム,クロム化合物,シュウ酸,ブドウ糖なども還元作用をもつ。しかし,還元剤は,反応する相手によって酸化剤にもなり,さらに温度,圧力等の反応条件によって酸化剤,還元剤いずれにもなるものもある。有機化合物の還元は,白金,パラジウム,ニッケルを触媒として水素ガスと反応させるか,各種の水素化物,亜鉛・スズなどの金属と酸,液体アンモニアとアルカリ金属を用いる場合が多い。…

※「酸化剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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