日本大百科全書(ニッポニカ) 「境界値問題」の意味・わかりやすい解説
境界値問題
きょうかいちもんだい
微分方程式に関し、ある領域で微分方程式を満たし、この領域の境界で与えられた条件を満たす解を求める問題を境界値問題という。このとき境界上で与えられた条件を境界条件という。二階常微分方程式
(p(x)y′)′+(q(x)+λ)y=0
を区間[a,b]上で考え、境界条件
αy(a)+βY′(a)=0
γy(b)+δy′(b)=0
を課した境界値問題をスチュルム‐リウビルの問題という。ただしp(x)は正値で、α2+β2とγ2+δ2は0でないとする。またλはパラメーターである。これは、たとえば弦の定常振動を記述する関数を求める問題として現れる。そのためパラメーターλに対し、境界値問題の0でない解を求める問題が重要である。これを固有値問題という。λに対し0でない解があるときλを固有値、その0でない解を固有関数という。いまの場合、固有値は可算無限個あり、それらをλnとするとλ0<λ1<……<λn<……と並べることができて、λn→∞(n→∞)となる。各λnに対する固有関数は定数倍することを除いて一意的に定まる。その一つをψn(x)とすると、関数列{ψn(x)}は区間[a, b]において完備直交列をなす。0が固有値でないとすると適当な関数G(x,ξ)が存在して、与えられたf(x)に対し
(p(x)y′)′+q(x)y+f(x)=0
の解で、前記の境界条件を満たすものは
で与えられる。このG(x,ξ)をグリーン関数という。このときスチュルム‐リウビルの問題は、積分方程式
の解を求める問題と同等になり、積分方程式の理論が適用される。
偏微分方程式についても境界値問題が考えられる。固有値問題としては、たとえばDを三次元空間の有界領域でその境界Sが十分滑らかであるとき、Dで方程式
を満たし、S上で0となる解uを求める問題がある。固有値、固有関数の概念が常微分方程式の場合と同様に定義され、この場合も固有値は可算無限個で、それらは
λ1<λ2<……<λn<……,
λn→∞ (n→∞)
となる。各λnに対し一次独立な固有関数は有限個しかない。これらをψn, 1(x),……,ψn, m(n)(x)とすると、関数列
{n,j(x) ; j=1, 2,……, m(n), n=1, 2,……}
はD上の完備直交関数列になる。
[小林良和]