夏成(読み)なつなり

精選版 日本国語大辞典 「夏成」の意味・読み・例文・類語

なつ‐なり【夏成】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 穀物果実などが夏に成熟すること。また、そのもの。転じて、夏に納める生産物、貢租をいう。中世では麦が多かった。
  3. 江戸時代、夏に納める畑年貢。夏地子。夏年貢。〔地方凡例録(1794)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「夏成」の意味・わかりやすい解説

夏成 (なつなし)

中世には〈夏済〉とも書く。夏季に上納される済物,すなわち納期を夏とする年貢などを意味する語。夏成に対比されるのが〈春成〉〈秋成〉で,それぞれ春と秋を納期とするものであった。〈夏麦〉〈麦地子〉などと史料にあるように,一般的には大麦小麦など麦地子が多かったが,銭納の場合もみられる。戦国家法の一つ《結城氏新法度》(1556)の101条に〈郷中より年貢の取様,夏年貢は五月端午の日より,六月晦日に立て切るべし。中の年貢六月の一日立てべし〉とあり,その納期がわかる。また後北条氏の場合にも,畑年貢に〈秋成〉と〈夏成〉がみられる。《地方凡例録(じかたはんれいろく)》(1794)によると,近世関東では畑年貢を夏成といい,〈関東計りナツ成とて夏収む〉とある。夏の物成であるから〈なつなり〉といわれた。
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世界大百科事典(旧版)内の夏成の言及

【秋成】より

…中世では〈秋済〉とも書き,秋に上納される済物(さいもつ∥なしもの)つまり秋を納期とする年貢などを意味した。これに対比される用語が〈春成〉〈夏成〉で,それぞれ春と夏を納期とするものであった。秋期であるから米年貢が多かったが,それだけではなく,例えば《九条家文書》によると,彼岸料足(彼岸銭)が2月と8月に納められ,これを〈春成〉と〈秋成〉と称している。…

※「夏成」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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