大学事典 「外部資金と利益相反」の解説
外部資金と利益相反
がいぶしきんとりえきそうはん
利益相反(conflict of interest)とは,同一人物が特定の行為に関して,関連する複数の当事者の利益を代表することをいう。営利企業から外部資金を得て進める研究活動では,たとえばそれに従事する大学研究者が相手先企業から報酬を得る立場にある場合,大学の職員としての立場と相手先から報酬を得る立場の間で葛藤が生じる。もし,相手先企業の利益,ひいては個人の利益を優先する場合は,大学の利益や大学の研究活動の不偏性を犠牲にすることにつながる。このような状況を利益相反という。大学研究者が得る利益の中には,金銭的報酬のみならず株式やストックオプションなども含まれる。また,一定範囲の親族,姻族の利害関係(報酬,株式などのほか,取引関係も含まれる)についても判断の対象となる。ただし,一定以下の利害関係については,それを開示することで公平性を担保する。利益相反が生じる可能性のある外部資金による研究等については,事前に機関内で審査を受け,利益相反と判断される場合は研究を実施することはできない。製薬会社から寄付金を得ている研究者が,その会社が販売する医薬品の臨床研究を実施する場合等は,個人的収入でなくとも利益相反として扱われるようになりつつある。
著者: 小林信一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報