多動症候群(読み)たどうしょうこうぐん

百科事典マイペディア 「多動症候群」の意味・わかりやすい解説

多動症候群【たどうしょうこうぐん】

たえず落ち着きがなく集中できず,人の話を聞けない,衝動的に行動したり危ないことばかりする,といった症状をさす。ドイツの医師H.ホフマンが1854年に初めて報告し,その後多くの学者がさまざまな病名や症状を記録している。たとえば,出生前後の脳損傷で起こるという説ではbrain damage syndrome(脳損傷症候群の意)と呼ばれたり,落ち着きがない症状からhyperkinetic syndrome(行動過剰症候群の意)という名称もある。 アメリカ精神医学会ではADHD(attention deficit hyperactivity disorder=注意力欠損多動障害の意)と名づけ,これを(1)注意力がない,(2)多動・衝動的,の2タイプに分類している。 (1)は細かい注意力に欠けるかケアレスミスをする,注意力を維持できない,人の話が上の空である,指示に従うことが困難――など9項目のうち6以上があてはまる場合をいう。(2)はそわそわする,座っていられない,過剰に走り回るか物によじ登る,静かに物事を遂行できない――など9項目のうち6項目が該当する場合である。(1)と(2)をともなうケースや,これらの項目でなくても日常生活に支障をきたす例も含む。 症状が目立ちはじめるのは,集団生活に入る3〜4歳が多く,小学生の3〜5%にみられる。男の子が女の子の3倍かかりやすい。年齢とともに落ち着いていくが,多動症候群の子どもの20〜30%は大人になっても症状が残る。 多動症候群では前頭葉(ぜんとうよう)(脳の前の部分)と脳幹神経節(大脳髄質のなかにある神経核の集団)の大きさが,通常よりも10%少ないことがわかっている。また,多動や衝動的な行動を抑制する脳内の神経伝達物質ドーパミン遺伝子異常が関与していると考えられている。 治療には中枢神経刺激薬のメチルフェニデートを投与するほか,本人や両親とのカウンセリングが必要である。→発達障害

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