生まれつきの脳機能の障害とされる。特定の物事にこだわりがある他、対人コミュニケーションが苦手な「自閉症スペクトラム障害(ASD)」、落ち着きがなかったり、衝動的に行動したりする「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、読み書きや計算が苦手な「学習障害(LD)」などの総称。言葉の遅れなど、親が子どもの発達に違和感を覚えたり、自治体の行う乳幼児健診で指摘されたりして発覚するケースが多い。いずれも障害の程度はさまざまで、必要な配慮もそれぞれ異なる。
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こだわりが強い自閉スペクトラム症(ASD)や忘れやすい傾向のある注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(LD)などの総称。個人差はあるが、得意なことと不得意なことの差が大きく、学校や職場など集団生活で壁にぶつかる人も多い。神経回路や神経伝達物質の調整機能の差が原因とみられ、神経発達症と呼ぶ専門家も増えてきた。研究の歴史は浅く、数年ごとに診断名や基準が見直されている。
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発達期の脳機能不全に起因して発生する障害の総称。成人期になって発生する中途障害とは異なり、発達期に明らかとなる点がその特徴である。相応の支援が必要であって、それは一生涯続く。
発達障害は、なんらかの原因によって脳の発達に不都合が生じ、発達の停滞や偏りが出る。それが他者の介入を必要とするほどの周囲との摩擦の原因となる。なお、これらの摩擦自体は発達障害が発生する直接の原因とはならない。発達障害のある人々の不適応の状態は、個人の発達的変化によって様相を変えていき、そこに環境要因は多大な影響を及ぼす。
そもそも発達障害(developmental disabilities)とは知的障害を基盤にし、その拡張概念としてつくられた法律用語である。第35代アメリカ大統領のJ・F・ケネディは、当時は精神薄弱者といわれていた知的障害者への包括的な支援を目ざして特別委員会を設立し、支援策を諮問した。1963年、その答申に基づいた法案のなかにdevelopmental disabilitiesという用語が初めて登場する。当然、知的障害を含むとするのが一般的な理解であった。法的に位置づけられなければ支援は得られないため、「知的障害と同様の支援が必要」な状態として、さまざまな障害群が発達障害に含まれることになった。発達障害の概念としてはもっとも広い考え方で、多くの研究者や臨床家の支持が得られてきた。
次に医学的な側面からみていくと、発達障害(developmental disorders)は、1987年から1993年まで使われていたアメリカ精神医学会の診断と分類のための基準(DSM)の第3版改定版(DSM-Ⅲ-R)のなかで、精神遅滞(知的障害)、広汎(こうはん)性発達障害(自閉症とその近縁の発達障害)、特異的発達障害(発達性言語障害、学習障害、不器用児など)の上位概念として用いられていた。しかし、その後のDSM第4版(DSM-Ⅳ。1994)および解説部分のみの改訂のDSM第4版改訂版(DSM-Ⅳ-TR。2000)では、発達障害を構成していた診断名は残ったが、上位概念としての発達障害の記載はなくなった。
2013年5月、DSM第5版(DSM-5)が発表された。そのなかに「神経発達障害」(neuro-developmental disorders)の章が創設され、そこに含まれる診断名として、(1)知的障害(旧精神遅滞)、(2)コミュニケーション障害(さまざまな言語障害含む)、(3)自閉症スペクトラム障害(旧広汎性発達障害)、(4)注意欠陥多動性障害(ADHD。新たに加わる)、(5)特異的学習障害(LD)、(6)運動障害(発達性協調運動障害、チックなど)、(7)その他があげられている。
一方、日本の発達障害者支援法(2004年成立)の定義では知的発達に遅れのない発達障害をさし、この点が欧米の理解とは異なる。さらに、支援のあり方としては、精神障害と同様と規定した。日本での法律上の定義は包括的で広範囲な発達障害概念の一部を示しているにすぎず、同じ用語でも示す範囲が違っていることに注意が必要である。
[原 仁]
『杉山登志郎著『発達障害のいま』(講談社現代新書)』▽『松為信雄著『発達障害の子どもと生きる』(幻冬舎ルネッサンス新書)』
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(中村敬 大正大学人間学部人間福祉学科教授 / 2008年)
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