多形腺腫、腺リンパ腫、唾液腺がんなど

六訂版 家庭医学大全科 の解説

多形腺腫、腺リンパ腫、唾液腺がんなど
(のどの病気)

●良性の腫瘍

 唾液腺には多くの組織学的特徴をもつ腫瘍が発生します。多形腺腫は、良性腫瘍のなかで、最も頻度の多いものです。中年女性にやや多く、発育速度が非常に遅いのが特徴です。

 なかには、気がついてから何年もたってから病院を受診される患者さんもいます。しかしながら放置すると非常に大きくなってしまいます。摘出腫瘍の重さが1㎏以上になった報告もあります。通常は痛みや顔面神経麻痺などの症状を伴わず、多発することはありません。触診では、ごつごつして硬い、よく動く腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)が特徴です。

 腺リンパ腫は、多形腺腫に次いで頻度の高い良性腫瘍です。高齢男性に多く発生します。多形腺腫と異なり、時に同時に数個の腫瘍が発生することがあります。まれには両側耳下腺に発生することもあります。多くの場合、耳の下方に比較的軟らかい、丸い腫瘤を触れます。

 良性腫瘍でも放置すると大きくなり、大きくなるほど手術における顔面神経麻痺などの合併症再発の危険性が高くなります。また、うまく手術されず再発すると、2回目の手術はかなり難しくなります。

●唾液腺のがん

 唾液腺にもさまざまながんが発生します。がんでは、痛みや、顔面神経麻痺、頸部(けいぶ)リンパ節転移などがみられることがあります。唾液腺のがんのほとんどは、放射線治療では根治させることが困難なタイプのものなので、手術による治療が第一選択となります。術後に放射線治療や化学療法を追加することもあります。

 手術においては、良性腫瘍とは異なり、周囲組織の合併切除が必要なため、顔面神経麻痺などの合併症が出ることが少なくありません。そのような場合は、さらに形成外科的手術の追加が必要となります。

 腫瘍の性質にもよりますが、再発や転移のため予後不良の例も少なくありません。また、再発・転移が5年以上たって生じるような腫瘍もあり、たとえ切除がうまくいったと思われても、普通のがんよりは長期間経過をみる必要があります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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