デジタル大辞泉
「夢野の鹿」の意味・読み・例文・類語
ゆめの‐の‐しか【夢野の鹿】
夢野(現在の神戸市兵庫区湊川の西)にいたという夫婦の鹿。また、その伝説。日本書紀の仁徳38年や摂津国風土記に見える。昔、夢野に夫婦の鹿がおり、牡鹿には淡路の野島に妾の鹿がいた。牡鹿はある夜、自分の背に雪が降り、すすきが生える夢を見た。牝鹿は妾のもとに通うのを妬んでいたので、この夢を射殺される前兆の夢だと占って、野島に行くのをとめた。しかし、牡鹿は妾の鹿恋しさに野島へ向かい、その途中の海で船人に見つかり、射殺されたという。
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ゆめの【夢野】 の=鹿(しか)[=牡鹿(おじか)]
① 摂津国菟餓野
(とがの)に住んでいたある鹿についての伝説。また、その鹿。菟餓野の牡鹿が、自分の背に雪が降り積もり薄がはえる夢を見て、それを妻の牝鹿に話したところ、牝鹿はかねがね夫が
淡路島の野島に住む妾のもとに通うのを妬んでいたので、この夢を「薄は矢が立つこと、雪は殺された後で白塩を塗られること」と占って、夫が妾のもとに行くことをとめた。夫は聞き入れないで淡路島へ出かけ、途中で射殺されたという。こののち菟餓野は夢野と改名された。「
書紀‐仁徳三八年七月」の条や「摂津風土記」
逸文に見える伝説で、のち和歌などにもよく詠まれている。《季・秋》
※
山家集(12C後)上「夜を残す寝覚に聞ぞ哀なる
ゆめののしかもかくや鳴くらん」
② 気にかかっていた
物事が予感通りになること。心配していた
事柄が現実となって現われることのたとえ。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)三「でかいたでかいた。内侍六代生捕たな。ハテよい器量。夢野の鹿(シカ)で思はずも、女鹿子鹿の手に入るは」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報