① 摂津国菟餓野(とがの)に住んでいたある鹿についての伝説。また、その鹿。菟餓野の牡鹿が、自分の背に雪が降り積もり薄がはえる夢を見て、それを妻の牝鹿に話したところ、牝鹿はかねがね夫が淡路島の野島に住む妾のもとに通うのを妬んでいたので、この夢を「薄は矢が立つこと、雪は殺された後で白塩を塗られること」と占って、夫が妾のもとに行くことをとめた。夫は聞き入れないで淡路島へ出かけ、途中で射殺されたという。こののち菟餓野は夢野と改名された。「書紀‐仁徳三八年七月」の条や「摂津風土記」逸文に見える伝説で、のち和歌などにもよく詠まれている。《 季語・秋 》