淡路(読み)アワジ

デジタル大辞泉 「淡路」の意味・読み・例文・類語

あわじ〔あはぢ〕【淡路】

旧国名の一。現在の兵庫県淡路島淡州たんしゅう
兵庫県南部、淡路島の北半を占める市。明石海峡大橋で本州と接続。神戸淡路鳴門自動車道が縦貫する。平成17年(2005)4月に津名町淡路町北淡ほくだん町、一宮町東浦町が合併して成立。人口4.6万(2010)。
謡曲。脇能物観世金春こんぱる金剛流観阿弥作。神代の古跡の淡路で、臣下の前に伊弉諾尊いざなぎのみことの神霊が現れて歌舞を奏する。

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精選版 日本国語大辞典 「淡路」の意味・読み・例文・類語

あわじあはぢ【淡路】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 南海道六か国の一つ。瀬戸内海東部にある淡路島全体をいう。古代より荘園が多くおかれ、中世には佐々木、長沼、細川、三好の諸氏が支配。近世は池田氏、のち蜂須賀氏の領国となる。明治四年(一八七一)の廃藩置県により大半が名東(みょうどう)県(徳島県)に属したが、同九年に兵庫県に編入。淡州。
    2. [ 二 ] 兵庫県南部、淡路島の地名。島の北部を占める。明石海峡大橋で神戸市と結ばれる。平成一七年(二〇〇五)市制。
    3. [ 三 ] 謡曲。脇能物。観世、金春、金剛流。世阿彌作か(曲舞は観阿彌作曲)。別名「楪葉(ゆずりは)」。臣下が神代の古跡の淡路を訪れると、伊邪那岐命が現われて国土創成のさまを見せ、御代をことほぐ。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 「あわじむすび(淡路結)」の略 ) =あわびむすび(鮑結)
    1. [初出の実例]「うろ覚へあわぢを崩しこまってる」(出典:雑俳・柳多留‐五二(1811))

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改訂新版 世界大百科事典 「淡路」の意味・わかりやすい解説

淡路[市] (あわじ)

兵庫県淡路島北東部にある市。2005年4月旧淡路,一宮(いちのみや),津名(つな),東浦(ひがしうら),北淡(ほくだん)の5町が合体して成立した。人口4万6459(2010)。

淡路市北端の旧町。旧津名郡所属。人口6834(2000)。明石海峡に臨み,町域の大半は標高200m前後の丘陵からなり,花コウ岩の岩盤がいたるところに露出している。本州と淡路島を結ぶ交通上の要衝で,戦国時代には海峡制覇の軍事的拠点であった。中心の岩屋は港町で,漁業や水産加工業の拠点である。明石市まで高速艇で13分のため,明石市,神戸市方面への通勤者が多い。北部の松帆ノ浦などは《万葉集》にも詠まれた景勝地である。神戸淡路鳴門自動車道が通り,明石海峡大橋や県立淡路島公園の建設により,観光・リゾート地として変貌してきている。

淡路市南西端の旧町。旧津名郡所属。1955年江井・郡家(ぐんげ)両町と多賀・尾崎両村が合体,一宮町となり,56年山田村を編入。人口9233(2000)。播磨灘に面し,津名丘陵の西斜面を占める。北部の丘陵は地塁山地で急斜面の断層海岸をなす。多賀には淡路国一宮の伊弉諾(いざなぎ)神宮があり,町名はこれに由来する。郡家川河口の郡家は古代の郡家(ぐうけ)の所在地で,交通の要地である。溜池が多く,水田が棚状に作られ,稲作が行われるが,野菜,花卉の栽培や和牛の飼育にも力が入れられている。南部の山田などではミカン栽培が盛ん。江井では漁業とともに線香の生産が行われ全国一の生産を誇る。

淡路市南端の旧町。旧津名郡所属。人口1万6801(2000)。大阪湾に面し,津名丘陵東斜面を占める。背後の丘陵によって西風がさえぎられて温暖な気候であり,カーネーションなどの花卉やオレンジの栽培が盛んで,京阪神方面に出荷される。中心は明治時代に郡役所が置かれた志筑(しづき)で,志筑川河口に市街地が広がり,津名港がある。西宮市甲子園浜や泉佐野などとの間に直通フェリーがあったが,現在は廃止。

淡路市東端の旧町。旧津名郡所属。人口8798(2000)。東は大阪湾に面する断層海岸で,西側には津名丘陵が広がり,南北に長い町域をなす。温暖な気候に恵まれ,ミカン栽培や花卉栽培が盛ん。特にカーネーション,菊,キンセンカが多く,海岸沿いの平野で温室栽培され,大磯港からフェリーで京阪神市場に出荷される。漁業は仮屋などで行われるが,ノリ,ワカメの養殖が増えている。工業では色瓦の製造が盛ん。

淡路市北西部の旧町。旧津名郡所属。人口1万0218(2000)。おもに花コウ岩からなる津名丘陵の西斜面を占め,明石海峡と播磨灘に面する。北部は特に傾斜が急で棚田が多い。中心集落の富島(としま)は淡路島西岸随一の漁港を有し,明石とは定期船で結ばれる。米作,畜産のほか,傾斜地を利用したビワ栽培が盛んで,観光ビワ園もある。漁業はタコなどの沿岸漁業中心から,ノリの養殖などへの転換が進んでいる。南部の伊勢ノ森(516m)は眺望がよく,瀬戸内海国立公園に属する。阪神・淡路大震災では大きな被害が出たが,野島断層の活動の跡が保存されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「淡路」の意味・わかりやすい解説

淡路(市)
あわじ

兵庫県南部にある市。瀬戸内海に浮かぶ淡路島の北部に位置する。2005年(平成17)、津名(つな)郡津名町、淡路町、北淡町(ほくだんちょう)、一宮町(いちのみやちょう)、東浦町(ひがしうらちょう)が合併して市制施行、淡路市となる。北は明石海峡、東は大阪湾、西は瀬戸内海播磨灘(はりまなだ)に面し、南は洲本(すもと)市に接する。島の北端から南西方向に津名丘陵が走り、志筑(しづき)、尾崎(おさき)間に断層崖(だんそうがい)があって丘陵を分断している。明石海峡に1998年(平成10)に明石海峡大橋が開通、神戸淡路鳴門自動車道の完成により、陸路で神戸とつながった。同自動車道が津名丘陵を貫通しながら縦断、淡路、東浦、北淡、津名一宮の各インターチェンジがある。丘陵東側を東浦、西側を西浦といい、東浦海岸部は国道28号、西浦海岸部は県道31号が走り、洲本市に通じる。東浦・西浦両海岸を結んで県道71号(北淡東浦線)、県道88号(一宮津名線)などが横断している。海上交通は、明石―岩屋間に高速艇が就航している。

 785年(延暦4)藤原種継(ふじわらのたねつぐ)暗殺に連座して皇太子を廃され、淡路への配流途中で憤死した早良(さわら)親王の遺骸は淡路へ送られ埋葬された。墓所を下河合(しもがわい)や仁井(にい)の地に比定する説がある。のちに早良親王の怨霊(おんりょう)を鎮めるために建立された霊安寺は久野々(くのの)の常隆(じょうりゅう)寺ともいわれる。845年(承和12)には播磨国明石浜との連絡用に、岩屋浜(いわやはま)に船と渡子が置かれている。近世には阿波徳島藩領で、江井(えい)浦の住田家が廻船問屋(かいせんどんや)として活躍。淡路瓦が地場産業となった。東浦は地理的条件を生かし、大阪湾岸の諸都市に漁獲物や竹、割木など原料・燃料を供給し、それら諸都市は出稼ぎ先ともなっていた。

 1995年(平成7)1月、当時の淡路町岩屋沖を震源として兵庫県南部地震が起き、北淡町を中心に死者53名、重軽傷者1126名、全壊家屋3072戸の大被害を受けた。震源となった野島断層(断層露出部分の一部)は国指定天然記念物。その後、明石海峡大橋架橋により淡路島リゾート計画構想や大規模開発事業などが進められている。温暖な気候を利用し、東向きの傾斜地には温室団地が広がり、カーネーションなどの花の栽培が盛ん。江戸時代末期から昭和にかけて志筑に本拠を置き、淡路人形を使って活躍した淡路源之丞座(げんのじょうざ)伝来の資料(人形かしら187点ほか)は、姫路市の兵庫県立歴史博物館に収蔵されている。面積184.32平方キロメートル、人口4万1967(2020)。

[編集部]



淡路
あわじ

兵庫県淡路島北端、津名郡(つなぐん)にあった旧町名(淡路町(ちょう))。現在は淡路市の北東端を占める一地区。1956年(昭和31)岩屋町、釜口(かまぐち)村、仮屋(かりや)町、浦村が合併して成立。淡路島の玄関口であるため淡路町とした。1961年には仮屋、釜口、浦の3地区が分立して東浦(ひがしうら)町となった。2005年(平成17)一宮(いちのみや)、津名、東浦、北淡(ほくだん)の4町と合併して市制施行、淡路市となる。国道28号が通じ神戸淡路鳴門自動車道(こうべあわじなるとじどうしゃどう)の淡路インターチェンジがある。中心集落の岩屋は平安時代からの海港で、明石(あかし)海峡で相対する明石市とは高速船の連絡があり、神戸市舞子とは明石海峡大橋が通じる。タイ、タコの漁獲で知られ、ノリの養殖が盛んである。海岸には絵島、松帆(まつほ)の浦など景勝地が多い。大阪湾や播磨灘(はりまなだ)が見渡せる展望台を備えた県立淡路島公園がある。また2000年に行われた淡路花博の跡地に国営明石海峡公園(淡路地区)がつくられている。

[吉田茂樹]

『『淡路町風土記』(1971・淡路町)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「淡路」の意味・わかりやすい解説

淡路
あわじ

兵庫県南部,淡路市北端の旧町域。淡路島の北端に位置する。 1956年岩屋町,仮屋町の2町と浦村,釜口村の2村が合体して成立。 1961年岩屋町を除く旧3町村が東浦町として分離。 2005年津名町,北淡町,一宮町,東浦町の4町と合体して淡路市となった。中心集落の岩屋は,明石海峡に面する島の北の玄関口で古くからの交通の要地。 1977年に岩屋新港が誕生。周辺は万葉の昔から知られた大和島,絵島,松帆の浦などの景勝地が多く,一部は瀬戸内海国立公園に属する。丘陵地は大阪湾の埋立て用土砂の採取で変容。近年は漁業に代わって米,野菜,果樹の栽培が行なわれる。

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