淡路(読み)あわじ

精選版 日本国語大辞典 「淡路」の意味・読み・例文・類語

あわじ あはぢ【淡路】

[1]
[一] 南海道六か国の一つ。瀬戸内海東部にある淡路島全体をいう。古代より荘園が多くおかれ、中世には佐々木、長沼細川三好諸氏が支配。近世は池田氏、のち蜂須賀氏の領国となる。明治四年(一八七一)の廃藩置県により大半が名東(みょうどう)県(徳島県)に属したが、同九年に兵庫県に編入。淡州。
[二] 兵庫県南部、淡路島の地名。島の北部を占める。明石海峡大橋で神戸市と結ばれる。平成一七年(二〇〇五)市制。
[三] 謡曲。脇能物。観世、金春、金剛流。世阿彌作か(曲舞は観阿彌作曲)。別名「楪葉(ゆずりは)」。臣下が神代の古跡の淡路を訪れると、伊邪那岐命が現われて国土創成のさまを見せ、御代をことほぐ。
※雑俳・柳多留‐五二(1811)「うろ覚へあわぢを崩しこまってる」

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デジタル大辞泉 「淡路」の意味・読み・例文・類語

あわじ〔あはぢ〕【淡路】

旧国名の一。現在の兵庫県淡路島淡州たんしゅう
兵庫県南部、淡路島の北半を占める市。明石海峡大橋で本州と接続。神戸淡路鳴門自動車道が縦貫する。平成17年(2005)4月に津名町淡路町北淡ほくだん町、一宮町東浦町が合併して成立。人口4.6万(2010)。
謡曲。脇能物観世金春こんぱる金剛流観阿弥作。神代の古跡の淡路で、臣下の前に伊弉諾尊いざなぎのみことの神霊が現れて歌舞を奏する。

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改訂新版 世界大百科事典 「淡路」の意味・わかりやすい解説

淡路[市] (あわじ)

兵庫県淡路島北東部にある市。2005年4月旧淡路,一宮(いちのみや),津名(つな),東浦(ひがしうら),北淡(ほくだん)の5町が合体して成立した。人口4万6459(2010)。

淡路市北端の旧町。旧津名郡所属。人口6834(2000)。明石海峡に臨み,町域の大半は標高200m前後の丘陵からなり,花コウ岩の岩盤がいたるところに露出している。本州と淡路島を結ぶ交通上の要衝で,戦国時代には海峡制覇の軍事的拠点であった。中心の岩屋は港町で,漁業や水産加工業の拠点である。明石市まで高速艇で13分のため,明石市,神戸市方面への通勤者が多い。北部の松帆ノ浦などは《万葉集》にも詠まれた景勝地である。神戸淡路鳴門自動車道が通り,明石海峡大橋や県立淡路島公園の建設により,観光・リゾート地として変貌してきている。

淡路市南西端の旧町。旧津名郡所属。1955年江井・郡家(ぐんげ)両町と多賀・尾崎両村が合体,一宮町となり,56年山田村を編入。人口9233(2000)。播磨灘に面し,津名丘陵の西斜面を占める。北部の丘陵は地塁山地で急斜面の断層海岸をなす。多賀には淡路国一宮の伊弉諾(いざなぎ)神宮があり,町名はこれに由来する。郡家川河口の郡家は古代の郡家(ぐうけ)の所在地で,交通の要地である。溜池が多く,水田が棚状に作られ,稲作が行われるが,野菜,花卉の栽培や和牛の飼育にも力が入れられている。南部の山田などではミカン栽培が盛ん。江井では漁業とともに線香の生産が行われ全国一の生産を誇る。

淡路市南端の旧町。旧津名郡所属。人口1万6801(2000)。大阪湾に面し,津名丘陵東斜面を占める。背後の丘陵によって西風がさえぎられて温暖な気候であり,カーネーションなどの花卉やオレンジの栽培が盛んで,京阪神方面に出荷される。中心は明治時代に郡役所が置かれた志筑(しづき)で,志筑川河口に市街地が広がり,津名港がある。西宮市甲子園浜や泉佐野などとの間に直通フェリーがあったが,現在は廃止。

淡路市東端の旧町。旧津名郡所属。人口8798(2000)。東は大阪湾に面する断層海岸で,西側には津名丘陵が広がり,南北に長い町域をなす。温暖な気候に恵まれ,ミカン栽培や花卉栽培が盛ん。特にカーネーション,菊,キンセンカが多く,海岸沿いの平野で温室栽培され,大磯港からフェリーで京阪神市場に出荷される。漁業は仮屋などで行われるが,ノリ,ワカメの養殖が増えている。工業では色瓦の製造が盛ん。

淡路市北西部の旧町。旧津名郡所属。人口1万0218(2000)。おもに花コウ岩からなる津名丘陵の西斜面を占め,明石海峡と播磨灘に面する。北部は特に傾斜が急で棚田が多い。中心集落の富島(としま)は淡路島西岸随一の漁港を有し,明石とは定期船で結ばれる。米作,畜産のほか,傾斜地を利用したビワ栽培が盛んで,観光ビワ園もある。漁業はタコなどの沿岸漁業中心から,ノリの養殖などへの転換が進んでいる。南部の伊勢ノ森(516m)は眺望がよく,瀬戸内海国立公園に属する。阪神・淡路大震災では大きな被害が出たが,野島断層の活動の跡が保存されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「淡路」の意味・わかりやすい解説

淡路
あわじ

兵庫県淡路島北端、津名郡(つなぐん)にあった旧町名(淡路町(ちょう))。現在は淡路市の北東端を占める一地区。1956年(昭和31)岩屋町、釜口(かまぐち)村、仮屋(かりや)町、浦村が合併して成立。淡路島の玄関口であるため淡路町とした。1961年には仮屋、釜口、浦の3地区が分立して東浦(ひがしうら)町となった。2005年(平成17)一宮(いちのみや)、津名、東浦、北淡(ほくだん)の4町と合併して市制施行、淡路市となる。国道28号が通じ神戸淡路鳴門自動車道(こうべあわじなるとじどうしゃどう)の淡路インターチェンジがある。中心集落の岩屋は平安時代からの海港で、明石(あかし)海峡で相対する明石市とは高速船の連絡があり、神戸市舞子とは明石海峡大橋が通じる。タイ、タコの漁獲で知られ、ノリの養殖が盛んである。海岸には絵島、松帆(まつほ)の浦など景勝地が多い。大阪湾や播磨灘(はりまなだ)が見渡せる展望台を備えた県立淡路島公園がある。また2000年に行われた淡路花博の跡地に国営明石海峡公園(淡路地区)がつくられている。

[吉田茂樹]

『『淡路町風土記』(1971・淡路町)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「淡路」の意味・わかりやすい解説

淡路
あわじ

兵庫県南部,淡路市北端の旧町域。淡路島の北端に位置する。 1956年岩屋町,仮屋町の2町と浦村,釜口村の2村が合体して成立。 1961年岩屋町を除く旧3町村が東浦町として分離。 2005年津名町,北淡町,一宮町,東浦町の4町と合体して淡路市となった。中心集落の岩屋は,明石海峡に面する島の北の玄関口で古くからの交通の要地。 1977年に岩屋新港が誕生。周辺は万葉の昔から知られた大和島,絵島,松帆の浦などの景勝地が多く,一部は瀬戸内海国立公園に属する。丘陵地は大阪湾の埋立て用土砂の採取で変容。近年は漁業に代わって米,野菜,果樹の栽培が行なわれる。

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