日本大百科全書(ニッポニカ) 「大漁唄」の意味・わかりやすい解説
大漁唄
たいりょううた
日本民謡の分類上、祝い唄の1種目。漁業に従事する漁民が、大漁を祈願し、またそれに感謝して、漁の神へ捧(ささ)げる祝い唄の総称。大漁で収入が増えれば漁民の生活が潤うだけに、漁の豊凶は重要である。しかも、仕事場が海上で生命がかかっており、集団を必要とする漁法の場合は、結束を図ることが必要となる。加えて、海の生き物を殺し捕獲する形になるため、その所有者である海の神への敬虔(けいけん)な信仰心がある。それらが絡み合うため、大漁に関しては厳かな儀式を行う場合が多く、奉納される唄もまたそれに準じたものになりがちである。今日「大漁唄」または「大漁節」とよばれているものは、次の4種類に分類できる。〔1〕正月2日に漁師が網元の家に集まり、仕事始めの祝いと海上安全、豊漁、そして網元の繁栄を願って歌う祝い唄で、たとえば『ヨイヤナ』『ションガエ節』『まだら』『エンコロ節』『ヨイコノ節』など。〔2〕大漁のおり船上で海の神に感謝し、次の大漁を願いつつ歌う祝い唄で、たとえば『大漁唄い込み』『鯨(くじら)唄』『鯛(たい)の大漁唄』など。〔3〕大漁に際し氏神様へ報告に行き、社殿で奉納する祝い唄で、『銚子(ちょうし)大漁節』『千越し祝い唄』など。〔4〕大漁ののち漁師たちが網元の家へ集まり、大漁祝いの祝宴のおりに歌う祝い唄で、これは先のものを借用することが多い。
[竹内 勉]