日本大百科全書(ニッポニカ) 「大興安嶺」の意味・わかりやすい解説
大興安嶺(地区名)
だいこうあんれい / ターシンアンリン
中国、黒竜江(こくりゅうこう)省北端に位置する地区(二級行政区)。南西は大興安嶺山脈を隔てて内モンゴル自治区に隣接し、北東は黒竜江を隔ててロシア連邦と接する。呼瑪(こば)、漠河(ばくが)など3県と、4県級行政区があり(2017年時点)、このうちジャクダチ区、松嶺(しょうれい)区は、地理上は内モンゴル自治区オロチョン自治旗(き)に属する。常住人口51万1564(2010)。古来、北方民族の居住地であり、清(しん)代に盛京(せいけい)将軍の管轄となった。1964年林業開発の推進のため特区人民委員会が設置され、1965年には同委員会と大興安嶺林業管理局が合併し、企業と政府の一体管理体制が導入された。1970年大興安嶺地区となった。
林業のほか、石炭鉱業、金属加工業なども盛ん。地区内を嫩林線(嫩江(どんこう)―古蓮(これん))、伊加線(伊図里河(いとりが)―ジャクダチ)が通り、黒竜江の水運もある。また、二つの小規模な空港(漠河古蓮空港、ジャクダチ空港)がある。地区内には数多くのスキー場があり、漠河県にある北極村(ほっきょくそん)ではオーロラや真夜中の太陽(白夜)を見ることができる。
[周 俊 2018年1月19日]
大興安嶺(山脈)
だいこうあんれい / ターシンアンリン
中国、黒竜江(こくりゅうこう)省北部から内モンゴル自治区北東部に延びる山脈。西興安嶺ともいう。北は黒竜江岸から南はシラムレン河上流に至り、北東から南西方向に走る。全長1200キロメートル、幅200~300キロメートル、標高1000~1500メートルだが高い山地もあり、北から風水山(1398メートル)、古利牙(こりが)山(1394メートル)、太平嶺(1712メートル)、黄崗梁(こうこうりょう)(2029メートル)などが並んで、内モンゴル高原と松遼(しょうりょう)平原との分水嶺になっている。古・中・新生代の花崗岩(かこうがん)からなり、一部にジュラ系含炭層や新期玄武岩を含む。大陸性気候で1月の平均気温は北から南へ零下28~零下22℃、7月は18~20℃、年降水量は400ミリメートルで夏に集中する。東斜面の川は嫩江(どんこう)に、北・西斜面の川は黒竜江上流に注ぐ。南斜面の川は尻無(しりなし)川が多い。土壌は、北部は礫質(れきしつ)灰白森林土、暗褐色森林土が広がり、南部は石灰質黒土である。森林は北・中部がダフリヤカラマツ、コオノオレ、マンシュウシラカンバ、南部はモウコナラを主とする。人口密度は1平方キロメートル当り10人以下で、モンゴル族、漢民族、オロチョン族が住む。
[浅井辰郎]