朝日日本歴史人物事典 「天王寺屋五兵衛」の解説
天王寺屋五兵衛
生年:元和9.7.12(1623.8.8)
江戸前期の大坂両替商の創始者。姓は大眉家。同家は摂津国住吉郡遠里小野村(大阪市住吉区遠里小野町)の出身。初代五兵衛(法名光重)の父吉右衛門(秀綱)は大眉家の元祖と呼ばれ,大坂今橋に移り住み,天王寺屋の屋号を称した。寛永5(1628)年に両替店を開き,寛文10(1670)年には大坂町奉行により大坂両替屋仲間を統轄する十人両替のひとりに任命された。初代五兵衛は初めて手形の制度を創出して信用機構の確立に貢献した。諸藩の大坂蔵屋敷の蔵元や掛屋にもなり,商品取引組織の発達にも大きな役割を果たした。のちに幕府の御用金の徴募や,諸藩による大名貸の起債などにも対応し,「天下の台所」と呼ばれた大坂金融市場の中心的な担い手に成長した。明治維新のとき,経営近代化に成果を上げることができず,歴史の舞台から姿を消した。大眉家の菩提寺は久本寺(大阪市中央区谷町8丁目)にある。
(作道洋太郎)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報