妖精女王(読み)ヨウセイジョオウ(英語表記)The Faerie Queene

デジタル大辞泉 「妖精女王」の意味・読み・例文・類語

ようせいじょおう〔エウセイヂヨワウ〕【妖精女王】

《原題The Faerie Queeneスペンサーによる長編叙事詩。1~3巻は1590年、4~6巻は1596年、7巻は作者没後の1609年に刊行エリザベス女王に捧げられた作品。作者自身の創意によるスペンサー詩連が用いられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「妖精女王」の意味・わかりやすい解説

妖精女王
ようせいじょおう
The Faerie Queene

イギリスの詩人E・スペンサーの叙事詩。『神仙女王』の訳名もある。英詩史上もっとも重要な作品の一つ。最初の計画全12巻の一部が完成したにすぎないが、それでも全6巻(第1~3巻が1590年、第4~6巻が1596年刊。ほかに第7巻『無常』の断片)、3万3000行余りからなる大作である。ababbcbccと押韻する弱強五歩脚八行に同六歩脚一行を最後に加えた九行からなる独特の連を連ねた形式が用いられている。これがいわゆる「スペンサー風スタンザ」で、のちにバイロン、キーツら多くの詩人に用いられ、英詩の代表的詩型の一つとなった。

 各巻は、それぞれ「神聖」「節制」「貞節」「友情」「正義」「礼節」を主題として、エリザベス女王を象徴する女性グローリアナ(栄光)に仕える騎士の冒険を、寓意(ぐうい)の手法で物語っている。この詩はその音楽的な流麗さと絵画的な豪華さのゆえに、古くから傑作と評されてきたが、さらに今日では、キリスト教信仰と古典哲学の調和を目ざす人文主義的な理想を示す作品として、その思想的な面も重視されてきている。

[藤井治彦]

『熊本大学スペンサー研究会訳『妖精の女王』(1969・文理書院)』

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