改訂新版 世界大百科事典 「神仙女王」の意味・わかりやすい解説
神仙女王 (しんせんじょおう)
The Faerie Queene
イギリス・ルネサンス期を代表する詩人E.スペンサーの寓意叙事詩。第1~3巻は1590年,第4~6巻は96年刊,第7巻は未完。当時のエリザベス女王を,栄光に満ちた,貞節のかがみとしての神仙国の女王に見たて,これにイギリスの伝説の英雄アーサー王が騎士的思慕をささげる構想。当初のプランでは,叙事詩の伝統に則して12巻をたて,各巻の主人公として神仙女王に仕える12人の騎士のひとりひとりが割り当てられるはずであった。しかし,〈聖性〉〈節制〉〈貞節〉〈友情〉〈正義〉〈礼節〉を寓意的に表す騎士たちが第6巻まで活躍しただけで終わった。〈スペンサー連〉と呼ばれる9行1連型式を重ねて,流れるような音楽美にともなわれる詩行は,ルネサンス人好みのページェントの絵画美を見せるが,全編を新興国イギリスの政治意識,キリスト教新教徒の倫理観念が支配している。
執筆者:川崎 寿彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報