日本大百科全書(ニッポニカ) 「婦好墓」の意味・わかりやすい解説
婦好墓
ふこうぼ
1976年、中国、河南省安陽(あんよう)西郊にある殷墟(いんきょ)で発掘された中型墓。墓室は地下7.5メートルのところにある。多数の遺品のなかから「婦好」という銘のある青銅器が発見されており、殷墟早期の帝王、武丁(ぶてい)(前11世紀ころ)の妃(きさき)(妣辛(ひしん))と考えられている。甲骨卜辞(ぼくじ)によると、婦好は将軍として中国各地に遠征したという。墓葬は地上まで六層に分けて土をつき固めており、男女16人、犬六匹の殉葬が認められたが、地上には方形の建築、祠堂(しどう)とおぼしき遺址(いし)がみつかっている。青銅器440余点のほか、玉器590余点や骨角器560余点などが完全な状態で出土した。人物や動物をデザインした玉器など、形も色もなかなか見ごたえがある。
[吉村 怜]