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鎌田慧 かまた さとし

デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

鎌田慧 かまた-さとし

1938- 昭和後期-平成時代のノンフィクション作家。
昭和13年6月12日生まれ。業界紙記者などをへてフリーとなる。みずから現場を体験し労働者の立場から社会問題全般のルポをかく。昭和48年「自動車絶望工場」を発表,平成2年「反骨―鈴木東民の生涯」で新田次郎文学賞,3年「六ケ所村の記録」で毎日出版文化賞。ほかに「いじめ自殺」など。青森県出身。早大卒。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鎌田慧
かまたさとし
(1938― )

ルポライター。青森県弘前市生まれ。1954年(昭和29)青森県立弘前高校入学。57年高校卒業と同時に上京、板橋区の8ミリカメラ試作工場で機械工見習になるが3か月で退社。ガリ版印刷の見習工となる。労組結成に参加し、社会科学の本を読むようになる。60年早稲田大学文学部ロシア文学専修に入学、64年卒業。「総合芸術の会」に参加、機関誌『総合芸術』の編集者となる。64年、『総合芸術』に「ソヴェト・アヴァンギャルドの運命」を発表。67年、『新日本文学』に都電撤去問題のルポルタージュ「首切りと統制処分」を発表。68年、フリーとなる。70年、カドミウム中毒を取り上げた初の単行本『隠された公害』を発表。71年合併した新日本製鉄を取材した『死に絶えた風景』を発表。73年豊田市のトヨタ自動車で季節工として働き、この体験をもとに『自動車絶望工場』を発表。企業の広報室を通した「正門」からの取材ではなく、一労働者としてベルトコンベヤーの前に立ち、過酷な労働を身をもって経験しつつ書かれたこのルポルタージュは大きな反響を呼んだ。しかし大宅壮一賞選考委員会は、同書を候補作に挙げながらも、「取材の仕方がフェアでない」「ルポを目的とする工場潜入とわかってみれば、少なからず興ざめする」といった意見で賞を与えなかった。この「事件」は、賞とは、与えられる者だけでなく、与える者の見識や姿勢も同時に問うものとして、長く記憶されることとなった。74年これまで雑誌に発表したルポをまとめて『労働現場の叛乱』『ウラの社会を知る』として出版。75年旭硝子船橋工場で季節工として働き、同工場に出稼ぎで来ていた同僚たちを追跡取材。翌76年『逃げる民・出稼ぎ労働者』として出版。続いて『労働現場に何が起こった』『工場への逆攻』(1976)、『ガラスの檻の中で』『工場と記録』『職場に闘いの砦を』(1977)、弘前大学教授夫人殺人事件に関するルポルタージュ『血痕・冤罪の軌跡』『土と人間の記録』(1978)、『失業』『日本の兵器工場』『倒産』(1979)などを発表。79年、『新日本文学』編集長就任。80年高橋悠治(音楽家)、津野海太郎(編集者、1938― )らとミニコミ誌『水牛通信』を発刊。70年代の鎌田は労働の現場で起きている諸問題や、それが市民生活と相対したときに起きる公害問題、あるいは差別や冤罪などについて伝えてきた。
 80年代になると、そこに教育問題が加わり、83年に教育問題ルポルタージュ『教育工場の子どもたち』を発表する。90年(平成2)『反骨――鈴木東民の生涯』で新田次郎賞。91年『六ヶ所村の記録』で毎日出版文化賞。97年には大杉栄をその死から説き起こした評伝『大杉栄――自由への疾走』、98年には『ドキュメント屠場』を書く。90年代後半になると、バブル崩壊後の日本社会は、ますますその歪みを大きくしていった。矛盾は常に社会で最も弱い部分に出る。『いま、非情の町で』(1998)、『家族が自殺に追い込まれるとき』(1999)、『自立する家族』(2001)、『ひとを大事にしない日本』(2002)などで報告されるのはそうした部分である。鎌田の方法は常に「正門」からではなく「通用門」から入り、状況のなかでもっとも弱い者と同じ位置にある。[永江 朗]
『『労働現場の叛乱』(1974・ダイヤモンド社) ▽『ウラの社会を知る』(1974・ベストセラーズ) ▽『逃げる民・出稼ぎ労働者』(1976・日本評論社) ▽『労働現場に何が起こった』(1976・ダイヤモンド社) ▽『工場への逆攻』(1976・柘植書房) ▽『ガラスの檻の中で』(1977・国際商業出版) ▽『工場と記録』(1977・晶文社) ▽『職場に闘いの砦を』(1977・五月社) ▽『血痕・冤罪の軌跡』(1978・文芸春秋) ▽『土と人間の記録』(1978・現代書館) ▽『失業』(1979・筑摩書房) ▽『倒産』(1979・三一書房) ▽『大杉栄――自由への疾走』(1997・岩波書店) ▽『いま、非情の町で』(1998・岩波書店) ▽『家族が自殺に追い込まれるとき』(1999・講談社) ▽『自立する家族』(2001・淡交社) ▽『ひとを大事にしない日本』(2002・小学館) ▽『隠された公害』(ちくま文庫) ▽『死に絶えた風景』(現代教養文庫) ▽『自動車絶望工場』『日本の兵器工場』『教育工場の子どもたち』『反骨――鈴木東民の生涯』『六ヶ所村の記録』(講談社文庫) ▽『ドキュメント屠場』(岩波新書) ▽鎌田慧編集代表『「新日本文学」の60年』(2005・七つ森書館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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