日本大百科全書(ニッポニカ) 「子ども療養支援士」の意味・わかりやすい解説
子ども療養支援士
こどもりょうようしえんし
病気や障害のために医療機関で療養生活を送る子供の身近にいて、子供の人権に配慮し、子供の立場から心理的かつ社会的な支援を行う専門職。治療行為をする医師や看護師とは異なる立場で小児医療に参加し、医療現場での不安や痛みなどから、子供の受けるストレスを緩和し、入院生活を快適に過ごせるように支援する。英語名称child care staffの頭文字をとって、CCSとも略される。
子ども療養支援士が行うおもな支援として、(1)遊び、(2)プレパレーションpreparation(心の準備)、(3)家族支援、の三つがあげられる。(1)遊びは、すべての支援の中核となるもので、子供の年齢や発達段階、個性に応じてさまざまなプログラムが提供される。同時に、入院生活から発生するストレスを発散し、気分転換を促す効果が高く、強い気持ちを保たせるという意味からもたいせつである。(2)プレパレーションは、入院、検査、処置、手術などの診療を受ける子供に対して心の準備をさせ、ストレスを軽減させるために行われる事前説明やリハーサルのことである。通常は検査や処置の前に、模型、写真などを使って、診療について説明などをする。人形などのおもちゃや本物の医療器具を用い、子供が医師や看護師の役をすることもあり(メディカルプレー)、治療について理解を深める重要な手法である。(3)家族支援とは、療養生活を強いられる子供にとって、家族が重要な支えであり、求められる役割があることの説明を家族に対してするものである。
ヨーロッパやアメリカでは、療養生活を送る子供を支援する専門職の研究が1970年代から進められている。それによると子供自身の情緒の安定、医療体験に伴うトラウマの減少、退院後の社会適応能力が高まるといった面での効果が明らかになっている。
日本では1998年(平成10)に設立された「こどもの病院環境&プレイセラピーネットワーク」が、小児医療環境の改善を目ざして活動を続け、2011年(平成23)に子ども療養支援協会が発足した。日本の病院で働く子ども療養支援士の数は、2014年時点で40人ほどとなっている。
[編集部]