日本大百科全書(ニッポニカ) 「子買お」の意味・わかりやすい解説
子買お
こかお
鬼遊びの一種で、「子買おう」の意。鬼と親と1人ずつで、あとはみな子となる。遊びに入る前に親と鬼との間で一連の問答があるのが特徴で、「子とろ」という遊びと似ている。おそらく「子とろ」の遊びから発展変化したものと思われる。1824年(文政7)の『風俗問状答書』のうち、奥州白川の答書のなかにも、このときの唱え言が記録されているから、古くから行われた遊びだったことがわかる。「子買う子買う 子に何しんじょ 砂糖にまんじゅう それは虫の大毒……」という問答体の唱え言である。これと同類の遊びを、青森県五戸(ごのへ)地方で「こーろこーろ」といっているが、これは「子売ろう」で、子供を売買する風習の有無は別として、江戸時代に商業が発達してから、子供の遊びのなかに物の商いのまねごとをする遊びがたくさんみられるようになった。さらにこの遊びは明治から大正にまで続いている(大田才次郎編『日本児童遊戯集』1901)。子買おもその一つで、この型のものは、最後は鬼遊びとなって、追いつ追われつ、捕らえられた者は次の鬼となる。売るものは非常に変化に富んでいて、雀(すずめ)、猫、お雛(ひな)様、筍(たけのこ)、おでんなど、それによって問答のことばも変わってくる。そしてそのことばの応酬に遊びの興味の中心が移っていったような形跡が感じられる。
[丸山久子]