日本大百科全書(ニッポニカ) 「定電圧放電管」の意味・わかりやすい解説
定電圧放電管
ていでんあつほうでんかん
放電管の一種で、出力電圧を一定に保つために使用するもの。正規グロー放電の電位降下が一定である性質を利用し、負荷に流れるある電流範囲内で管の端子電圧が一定値を示すので、定電圧電源用として使われる。封入気体の種類、圧力、電極構造などを適当に選ぶことにより、電流のかなり広い範囲にわたって定電圧特性を得ることができる。
陰極は円筒形で、純粋なニッケルや表面にセシウムを主体とする希土類元素などを蒸着させたものを使用する。封入ガスはネオン、アルゴン、ヘリウムや、これらを混合したものである。バルブの形状にはMT形、GT形、ST形などがあり、おもに小電力の定電圧装置として無線機器に使用された。1980年代に入り、半導体による電圧安定化素子(ツェナーダイオード)が開発され、ほとんど利用されなくなっている。
[吹野 正]