改訂新版 世界大百科事典 「実業組合」の意味・わかりやすい解説
実業組合 (じつぎょうくみあい)
中小商工業者が組織する同業組合の総称。同業組合準則(1884,農商務省通達)にそって府県が認可したいわゆる準則組合,重要輸出品同業組合法(1897),のちの重要物産同業組合法(1900)によって設立された同業組合などが,実業組合と呼ばれた。産業組合法(1900)による産業組合が農業中心の農村型組織であるのに対して,実業組合は商工業中心の都市型組織であり,両者の利害はしばしば対立する。また実業組合は中小企業中心の組織であり,大企業の利害を代表するわけではない。このため,地域内同業者の強制加入制をとる重要物産同業組合に,大企業が違約金を支払っても加入しない場合もある。実業組合は,地域別の連合体をつくることが多い。東京実業組合連合会は1905年6月18日に創立総会を開いて以来,東京府の各種同業組合の連合体として,中小商工業者に共通する利害に関して集団的行動を続けた。大正末期の会員は,重要物産同業組合71,準則組合42であり,商況調査,紛議の仲裁・調停,生産性向上・労使問題の研究,官庁への諮問答申・建議などが主たる活動内容であった。大正末期には東京はじめ大阪,神戸,横浜など32府県にわたって実業組合連合会が組織されていた。武藤山治が22年に大日本実業組合連合会によって商工業者の政治活動を組織化しようとしたが,23年に実業同志会の結成に発展し,実業組合連合会の全国組織は誕生しなかった。
執筆者:三和 良一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報