神戸(読み)かんべ

精選版 日本国語大辞典 「神戸」の意味・読み・例文・類語

かん‐べ【神戸】

〘名〙 (「かむべ」とも表記) 令制での神社の封戸(ふこ)。神社に属して租、庸、調や雑役を神社に納めた民戸。じんこ。神封戸。神部。〔令義解(718)〕
※書紀(720)崇神七年一一月(北野本訓)「天つ社(やしろ)、国つ社(やしろ)、及(をよ)び神地(かみところ)、神戸(カムヘ)を定む」

こうべ かうべ【神戸】

(生田(いくた)神社の神領に付属した民戸、すなわち、神戸(かんべ)を中心に発達したことによると伝えられる) 兵庫県南東部の地名。県庁所在地大阪湾に面する。古くは大輪田の泊と呼ばれた兵庫港を中心に、対外貿易の拠点となり、慶応三年(一八六七)神戸港の開港後は国際貿易港として発展。清酒醸造業は古くから知られ、阪神工業地帯の一中心を形成。六甲山、有馬温泉などがある。明治二二年(一八八九)市制。

じん‐こ【神戸】

〘名〙 (「しんこ」とも) 神社に与えられて租(そ)、庸(よう)、調などの租税や祝(はふり)などの雑役を納めた民戸。かんべ。〔新令字解(1868)〕

かむ‐べ【神戸】

かんべ【神戸】

姓氏の一つ。

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デジタル大辞泉 「神戸」の意味・読み・例文・類語

こうべ〔かうべ〕【神戸】

兵庫県南東部の市。県庁所在地。指定都市大阪湾に臨む。古代、大輪田泊おおわだのとまりとして知られ、のち、平清盛が改修して兵庫津ひょうごのつとよばれた。慶応3年(1867)の開港後、国際港として急速に発展。阪神工業地帯の一中心。平成7年(1995)阪神・淡路大震災の被害を受けた。名称は生田いくた神社神戸かんべに由来。人口154.5万(2010)。
[補説]神戸市の9区
北区須磨区垂水区中央区長田区灘区西区東灘区兵庫区

かん‐べ【神戸】

《「かむべ」とも表記》神社に属して、調雑役を神社に納めた民戸。神封戸じんふこ神部かんべ。じんこ。

かむ‐べ【神戸】

かんべ(神戸)

じん‐こ【神戸】

かんべ

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改訂新版 世界大百科事典 「神戸」の意味・わかりやすい解説

神戸[市] (こうべ)

兵庫県南東部にある県庁所在都市。大阪湾北西部に位置する世界有数の港湾・貿易都市でもある。1889年市制。人口154万4200(2010)。1956年9月政令指定都市となり,現在は東灘,灘,兵庫,長田(ながた),須磨,垂水(たるみ),北,中央,西の9区がおかれている。六甲山が急傾斜の断層崖で大阪湾に落ちこむ山麓に細い帯状の平地が発達し,東西20kmにわたって市街がのびているが,南北は幅の広い所でも4kmしかない。このうち山手は住宅地,浜手は港湾や工場で,中間部が商業地区に利用されている。面積では市全体のわずか1/8のこの区域に人口の約6割が集中している。こうした地形上の制約で神戸の市街地の拡大は長らく妨げられていたが,昭和30年代に入って山を削って海を埋める大事業が始められ,現在では市街地は六甲山地の西や北に広がる一方,ポートアイランド六甲アイランドの海上都市が誕生した。1966年から15年の歳月を経て完成したポートアイランドは面積436ha,人口2万人の人工島で,ホテル,国際会議場,ファッション関係の業務施設などが立地し,周辺はコンテナー船バース11,ライナーバース15の巨大港湾施設を配置している。約10年遅れて着工した六甲アイランドは面積580ha,人口3万人を目ざす人工島で,やはり中央部には都市的施設,周辺部に港湾施設を配置している。2008年現在,六甲アイランド南側を埋め立てる工事が進行中である。

 神戸は近畿の西の玄関である明石海峡に近く,古来山陽道や瀬戸内航路など水陸交通の拠点として重要であった。奈良時代には大輪田泊(おおわだのとまり)と呼ばれ,12世紀中ごろには平清盛による大規模な修築が行われた。鎌倉時代に入ると兵庫津と名がかわり,清盛の築造した経ヶ島を中心に町が形成された。応仁の乱で町は一時衰退するが,江戸時代西廻航路が発達すると再び隆盛に向かい,幕末の開港まで海上交通の要衝として繁栄した。1867年(慶応3)兵庫津の東にある神戸浦が開港し,以後港湾の整備や居留地の開発が急速に進んだ。明治初年の人口は2万5000と推定されているが,市制施行時には13万に増加し,横浜と並ぶ貿易・港湾都市としての基盤も整った。またその時の面積は21.3km2にすぎなかったが,以後,市域は主として西に広がり,1941年には115.1km2に増加し,人口も90万をこえた。さらに50年に東灘区,西区,北区の区域を加え面積は530km2に増加した。以後の市域の増加は海面の埋立てによるもので,95年の現市域は547.3km2に達している。

 市内には農林漁業を除くと約8.6万の事業所があり,77万2000人が就業している(1991)。就業者のうち工業の占める割合は小さく,実数,構成比とも年々低下している。主要業種は食料品,鉄鋼,造船,機械,ゴム(ケミカルシューズ)の5業種であるが,その発展は,港湾と不可分の関係にある。近代工業の形成は明治初年に造船と輸出・輸入品の加工から始まったが,前者から鉄鋼,車両,通信機,家具装備品などが生まれ,後者ではマッチ,ゴム,製糖,製粉などがその例である。なお伝統産業としての酒で知られる酒造業があるが,その産地は市内東部の灘区から西宮市に至る臨海部で,古くから灘五郷と呼ばれている地域である。神戸はまた西欧文化の窓口としての役割を果たしてきたが,洋服,洋菓子,洋家具などは品質やデザインの優れていることでも定評がある。商業,サービス業では貿易港,県都として商社や大型小売店舗が多く,都心の三宮を中心に一大商業地区が形成されているが,隣接の大阪の影響で卸売業や中枢管理機能の発達は制約されている。しかし,ダイエーや灘生協(現コープこうべ)など小売業界の革新者を育てたことで知られる。

 神戸はJR東海道本線と山陽本線の接続点であり,山陽新幹線も1972年に開通した。市内には阪神,阪急,山陽,神戸の4電鉄線が走り,これらのターミナルを結ぶ神戸高速鉄道がある。また開発の進む北西部から都心への足を確保するための市営地下鉄も開通した。一般道路や高速道路の整備も進められているが,東西の回廊的位置を占めるため通過交通が多く,中国自動車道,山陽自動車道,明石海峡大橋などを結ぶ大阪湾岸道路全線の完成が待たれる。また神戸港は瀬戸内海航路の最大のターミナルとして,四国,九州,沖縄を結ぶ定期船が中埠頭から発着するほか,東部第3,第4工区にはカーフェリー専用の埠頭がある。市街地の背後に連なる六甲山は瀬戸内海国立公園に属し,早くから別荘地やゴルフ場が開発され,市民の行楽地になっている。六甲山の北の谷間には古くから知られた有馬温泉がある。神戸は4万人以上の外国人が居住する国際都市であり,外国人のための学校や基地,あるいは回教寺院関帝廟などの宗教施設がある。三宮の北の山麓には明治中期以降外国人の住宅が増え異人館と呼ばれてきたが,近年若い観光客を引きつけている。さらに歴史的・景観的価値の高い北野町の一角は伝統的建築物群保存地区に指定されている。

 神戸港は世界屈指の大貿易港であり,開港以来船会社,貿易商社,金融保険,造船,舶用機械など多くの関連産業が発達し,港湾都市としての規模,施設,サービスのいずれにおいても卓越した地位にあった。しかし1995年1月の阪神・淡路大震災で大型岸壁239バースのほとんどが被災し,とくに主力であるコンテナーバースは潰滅的打撃を受けた。その後2年余りで施設の復旧は完了したが,国内外の港にシフトした貨物を取り戻すに至らず,効率の向上や費用削減を迫られている。阪神・淡路大震災により神戸は死者4567人,全半壊家屋12万3000棟,全焼7000棟,被害総額約6.9兆円という大きな被害を受けた。震災後に復旧や新しいまちづくりが進められ,2006年にはポートアイランド南側の沖合に神戸空港が開港。
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神戸 (かんべ)

日本古代において,神社に世襲的に所属して,貢納と奉仕を任とした民戸。《日本書紀》崇神7年条に神戸の起源説話がみえるが,大化前代の神戸は部民的性格を持っていたと考えられている。令制では,国司によって作成された神戸の戸籍・計帳が神祇官に掌握され,封戸の一種として,調庸,田租,雑徭を負担した。その調庸,田租は国司の管理のもとに神社の造営,供神の料にあてられ,田租の残りは神税として義倉に準じて貯蔵され,出挙(すいこ)されなかった。また神戸の中から祝部(はふりべ)を選ぶのが原則とされた。神戸の数は806年(大同1)の《新抄格勅符抄》神封部には4876戸とみえる。また一郡全体の戸を神戸としたものを神郡(しんぐん)と称した。平安中期以降,神戸の実質的機能は失われたが,神戸の名を負う荘園が設置されていった。
執筆者:

神戸[町] (ごうど)

岐阜県南西部,安八郡の町。人口2万0065(2010)。揖斐(いび)川西岸に位置し,揖斐川扇状地の扇端部を占める。延暦寺領平野荘として平安時代から開発が行われ,中心の神戸は中世以来日吉神社の鳥居前町として発達した。東山道と揖斐川水運の要地でもあり,近世には衣類,米,酒,油などを扱う4・7・10の日の九斎市が開かれていた。近年,工業団地が造成され,レーヨンを中心とした繊維などの工業が発達し,農業も近郊農業に姿を変えている。大垣市方面への通勤者も多い。日吉神社の三重塔,地蔵菩薩座像などは重要文化財に指定されている。近鉄揖斐線(現,養老鉄道養老線)が通る。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「神戸」の意味・わかりやすい解説

神戸【かんべ】

古代,特定の神社に付属した民戸。〈じんこ〉とも。神田(しんでん)を耕し,雑役を務め,租・調・庸を所属する神社に納めた。9世紀初め,全国で170余社,約5000戸で,宇佐八幡宮は1660戸を数える。伊勢,大和をはじめ全国各地に地名として残る。
→関連項目寺社領神祇伯中河御厨

神戸【かんこ】

神戸(かんべ)

神戸【じんこ】

神戸(かんべ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神戸」の意味・わかりやすい解説

神戸
かんべ

古代,神社に属して,その経済を支えた特定の民。大化改新の前は神社所有の部民であろう。令制では神社に与えられた封戸 (ふこ) の一つで神社に租,庸,調,雑役を納め,神祇官の管轄に属したが,一般の民戸に準じて太政官,民部省などの支配も受けた。

神戸
かんべ

三重県北部,鈴鹿市の中心市街地の1つ。旧町名。地名はかつて伊勢神宮領であったときの名に由来。室町時代,この地方の豪族神戸氏の居城が築かれ,江戸時代も神戸藩の城下町であった。城跡は現在,公園となっている。市役所,文化会館などが集り,行政・文教の中心地。

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旺文社日本史事典 三訂版 「神戸」の解説

神戸
かんべ

律令制下,神社に属し,その経済を支えた戸
「じんこ」とも読む。神社に与えられた封戸 (ふこ) の一つで,租・庸・調を神社におさめ,神社の神職である祝部 (はふりべ) が選任されるほか,軽い雑役にも従事した。

神戸
じんこ

かんべ

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世界大百科事典(旧版)内の神戸の言及

【有封社】より

…古く封戸(ふこ)を有した神社のこと。封戸は国家より施入され,租,庸,調,雑役をその神社に納め,神戸(かんべ),神封戸とも呼ばれた。その起源は明らかでないが,古代神祇行政の整備とともに確立し,《新抄格勅符抄》に806年(大同1)当時,約170社4876戸の存したことを記している。…

【中国料理】より

… 長崎は日本における華僑発祥の地で,江戸時代すでに清国との交流が深い長崎に貿易商人としての華僑が渡来していた。神戸には1868年の開港で,諸外国人に交じって,中国本土と長崎から華僑が移ってくる。この華僑たちが神戸に中国料理をもたらすことになる。…

【兵庫】より

…神戸市兵庫区の兵庫港を中心とする地域の呼称。中世には兵庫三箇荘があって,港には兵庫南北両関が置かれた。…

※「神戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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