宮簀媛(読み)ミヤズヒメ

デジタル大辞泉 「宮簀媛」の意味・読み・例文・類語

みやず‐ひめ【宮簀媛】

日本武尊やまとたけるのみことの妃。尾張豪族の娘。日本武尊東征帰途、媛をめとって草薙剣くさなぎのつるぎを預けた。尊の死後、媛はこの剣をまつって社を建て、熱田神宮起源をなしたという。

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改訂新版 世界大百科事典 「宮簀媛」の意味・わかりやすい解説

宮簀媛 (みやずひめ)

記紀の日本武(やまとたける)尊物語にその妃として語られた女性。記では美夜受比売と記す。《古事記》によれば,ヤマトタケルの東征の最初,尾張の国で国造(くにのみやつこ)の祖ミヤズヒメと婚姻を約束した。その後東方を平定したヤマトタケルが約にしたがい姫の家に入ったところ,その夜は月経(つきのさわり)のため合うことをえなかったという。尾張は東国経営の要衝でここに熱田(あつた)神宮がおかれたのは東方へのおさえの神としてであった。ヤマトタケルが媛のもとに残した草薙剣(くさなぎのつるぎ)(三種の神器)をまつったのがこの神宮の起りだと社伝はしるしており,つまりミヤズヒメの物語は熱田神宮の起源譚である。その名は〈宮主(みやじ)〉を意味しているはずだが,《古事記》はさらに〈身合わず〉の意にとり,上述のような説話を仕立てたのであろう。
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朝日日本歴史人物事典 「宮簀媛」の解説

宮簀媛

『古事記』『日本書紀』によれば,日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の妃。尾張(愛知県)の国造の祖。ヤマトタケルが,東征の往路で婚約し,復路にその約に従って結婚するために媛の家に入ったところ,媛は月経をむかえてしまう。尊が「さ寝むと吾は思へど汝が著せる襲の襴に月立ちにけり(あなたと契ろうと思っていたのに,あなたの衣のすそに月が出てしまった)」と歌うと,媛は「君待ち難に我が服せる襲の襴に月立たなむよ(あなたを待ちきれずに月が登ったのですわ)」と即妙に歌い返した。これらは女性の生理を詠んだ希少な歌謡群でもある。この後婚姻は成立し,尊は伊勢の斎宮より拝領した草那芸剣を媛のもとに置いて伊吹山に出かけるが,そのまま帰らぬ人となった(『古事記』)。熱田神宮(名古屋市熱田区)は,この剣を宮簀媛が奉斎したことがその起こりとなったという。

(寺田恵子)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宮簀媛」の解説

宮簀媛 みやずひめ

記・紀にみえる日本武尊(やまとたけるのみこと)の妃。
尾張(おわり)氏の娘。日本武尊が東征の帰途,尾張(愛知県)で妃とした。媛のもとに日本武尊は草薙剣(くさなぎのつるぎ)をおき,のち近江(おうみ)(滋賀県)伊吹の山神を討ちにいって病死。媛は神剣を熱田の地にまつり,これが熱田神宮の起源という。「古事記」では美夜受比売。

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